第21話

男はそう言うと、わたしの目線に合わせるように長い足を折り曲げしゃがみ込んだ。


自然と、男の顔が近くなる。







「わたしはヒヤマといいます。あなたは、東原彩(ひがしはらあや)さんですね。」


男は丁寧に自己紹介をすると、当然のようにわたしの名前を言って来た。


誘拐だとほぼ確信しているわたしは、そのことに対して驚きもせずに黙って男を見つめた。






ヒヤマは何が可笑しいのか口角を上げてフッと笑うと、「さすがは大財閥のお嬢さん。さっきのことが嘘みたいに落ち着いてるな。」と急にタメ口で呟いた。


それでもわたしは無言だったけど、ヒヤマは全く構いもせずに話を続けた。







「もうお分かりかもしれませんが──我々は今日、あなたを誘拐しました。あなたの御両親には今、あなたの身柄と引き換えに身代金を要求しています。」

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