第19話

わたしの背後で誰かがその美しい男に向かって、何かを中国語で言った。


すると男は小さく頷き、わたしの上体を起こした。


呼吸の落ち着いたわたしは、支えがなくてもその場に座ることが出来るようになっていた。


男はそれを確認すると、わたしの体からそっと手を離し立ち上がった。


思わず、彼を見上げる。







Tシャツにジーンズ、エンジニアブーツという、ラフな格好。


こうして見ると、かなり若い。


17、8といったところだ。







立ち上がっても尚、しばらくわたしを見つめていたけど、やがて男は開いた格子の戸から出て行った。


その後ろから、ニキビ顔の男が着いて出て行く。


汚れたスニーカー…最初にこの部屋に入って来て何やら中国語で叫んだのは、多分彼だ。








二人は格子の戸をくぐり抜け、この牢屋のある部屋からも出て行った。


ギィ…パタン、と無機質な扉の閉まる音が響き渡る。

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