第13話

足首にはめられた手錠が床を擦る、何とも耳障りな音を響かせながら、わたしはやっと格子の元にたどり着いた。


格子の向こうには、3メートル程の空間を開けて、所々が錆びた鉄製の扉がある。


その横の壁に、電気のスイッチらしきものが一つだけある。


後は──何もない。


天井も壁も床もぐるりと見渡したけど、窓も、換気扇のようなものも、飾りすら何一つない。


あるのは、重々しいこの牢屋だけ。


どんなにくまなく眺めても、とてもじゃないけどこちらからは出れそうにない、黒い格子の壁だけ──。






どうにもならない、と気付いた時。


わたしは、激しい息苦しさを覚えた。


ハア、ハア、ハア…。


苦しい。


怖い。


怖いよ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る