第28話

お腹を庇うようにしながら、人混みに紛れ込む。


ライブで動きまわった後だからか、雪の中半袖のTシャツ姿の人もいてびっくりする。


皆顔に満足気な表情を浮かべていて、「リキが……」とか「ハヤタが……」なんて今日のライブの感想を楽しそうに言い合っている。


そんな彼らの顔を見て思った。


リキは今日も最高のライブをしたんだな、って。







「まじかっこ良かったよなぁ、ハヤタのギター」


「あと少しで、ピック取れそうだったんだよな~。隣の女が手ぇ伸ばして来てさあ」


「それよりさ、なんか今日リキ雰囲気怖く無かった?」


「ねえ、いつ出て来るの?さみぃし」


わたしのすぐ横で、大学生くらいの男の子達が3人大声ではしゃいでいた。


その中の一人の声がトモヤによく似ていて、一瞬トモヤがいるのかと思って見てしまった。


……だけど違った。


トモヤより、若そう。







そういえば、マカオンの大ファンであるトモヤもこの出待ちの集団のどこかにいるのかな。


いや、トモヤはライブが好きなだけだから出待ちなんてしないか。


男の子達がはしゃぐ様子をじっと見ながら、そんなことを考えていると。


「一人で来たの?」


その中の一人が、突然話し掛けて来た。

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