第91話
その歌は、今までとは打って代わって単調なメロディーでシンプルな歌詞だった。
それが逆に、ストンと落ちるかのようにわたしの心に真っ直ぐ響いた。
明るいテンポの曲なのに、何故かせつなくて。
───胸が、つかえた様にぎゅっと痛くて。
わたしは放心状態で、その歌を聞いていた。
何故だか分からない。
分からないけど────。
その短い曲に、心を揺さぶられたんだ。
歌い終わり、頭を下げてステージを去るメンバー達。
アラレのように降り注ぐアンコールの声を聞きながら、いつの間にか隣に中田くんがいたことに気付いた。
中田くんは、誰もいなくなったステージをじっと見つめていて、わたしの目線に気付くとこっちを見た。
そして、なぜか少しだけ。
────ほんの少しだけ、わたしに微笑み掛けた。
アンコールの曲は彼ら最大のヒット曲2曲で、会場の興奮は絶頂のままライブは終了した。
わたしと中田くんは、人混みに流されるようにライブハウスの外に出た。
ライブハウス前は、メンバーの出待ちで一向に人が減る気配もなさそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます