第86話
──え?って言えたのかどうかも分からない内に、あっという間に中田くんは木村くんに腕を掴まれて、ホールの外に行ってしまった。
ひしめく人達の中、一人ポツンと取り残されたわたし。
あまりに呆気ない出来事に、しばらく声も出なかった。
───タイミングがいいのか悪いのか。
そこで───。
辺りの人達が大歓声を上げて、一気に場内が熱気に包まれた。
暗闇の中、ステージに人がゾロゾロと出て来たのが分かる。
各々が楽器を手に取り、ギターを掻き鳴らす音が少しだけ響いて。
ドラムのスティックがリズムを取り、一気にギターの爆音が響き渡った。
同時にステージがライトアップされ、Mar's Company のメンバーが楽器を演奏する姿が映し出された。
悲鳴にも似た歓声。
押し合いへし合い、飛び上がる人々。
わたしの背後から、歓喜に満ちた人達が押し寄せ背中を圧迫して来た。
余りの周りの熱気に、初めは少し戸惑う。
だけど、押されるようにして人込みに潜り込み人々の背中の隙間からステージの真ん中でマイクに向かうコウ先輩をわたしの目が捉えた時。
───心臓がドクリと音をたて、ステージに目が釘付けになった。
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