第84話

そこで、全く予想もしていなかった人物がホール側の入り口のすぐ側から声を掛けてきた。


「あれ、リキじゃん!」


周りの喧騒も物ともせずに大声を張り上げてこちらに向かって来たのは、金髪の短い頭をツンツンに立たせた、とても目立つ男の子だった。


目鼻立ちも派手で、耳にはピアスが光っている。


この人確か───同じ学年の、木村くんって人だ。


いつだったか、中田くんと木村くんが仲がいいというようなことを、ユイが言っていた。


学年一目立っている木村くんと、地味なイメージの中田くんとじゃ全く合わない気がして信じられなかったけど、本当のことだったみたい。







「なになに?お前が来るなんてめずらしーじゃん!」


わたし達の目の前まで来て、うれしそうに声を上げる木村くん。


声が大きいから、自然と周りの視線を集めている。


「何?一人で来たとか?俺も一人だから、誘ってくれりゃあいいのに。っていってもお前携帯ないよな、いい加減持てよ。」


中田くんに向かって、ハイテンションに喋りまくる木村くん。


「───ん、何?リキ女連れてんのか!?」


そして突然わたしの存在に気付いたみたいで、驚いた声を出した。


それからじっとわたしを見つめて、「どっかで見たなあ。」と呟き、やがて「あーっ!」とまた大声を出した。


───何かと、騒々しい人みたい。

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