第81話

自分のチケットの整理番号を見てみたら、2ケタの数字が書かれていた。


本当は、すごく早くにライブハウス内に入れたんだと思う。


ぎりぎりに待ち合わせをして入りそびれたことを、コウ先輩に申し訳なく思った。





きょろきょろと辺りを見渡してみたけど、中田くんがどこにいるか分からなかった。


携帯の番号なんて知らないから連絡のとりようも無いし、不安になる。


入場はもう終わったみたいで、ライブハウスの前は比較的人が少なくなっていた。


一人ペタペタとスニーカーで歩きながら、中田くんは何処かと必死に見回した。


──早くしないと、始まりそう。







その時、ちょうど入り口の脇にだるそうに壁に背を預けて立っている背の高い男の人を見つけた。


彼はわたしを見つけると、じっとこちらを見てきた。


手を上げたり、「やあ。」とか何もない。


でもだからこそ、それが中田くんだと分かるのにそんなに時間は掛からなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る