第69話

「アゲハ、おかえりぃ。遅かったね。」


教室に戻ると、ユイが笑顔でそう話し掛けて来た。


「売店、最近人多いよね。」


ユリナもそう言うので、微笑んで頷きそれに答えた。






スカートのポケットにしまい込んだチケットの感触が、わたしの胸を痛める。


コウ先輩にライブに誘われてチケットまで貰っといて、行かないわけにはいかない。


それに、Mar's Company のライブには実際興味がある。


───でも誰を誘う?


ユイはもちろんコウ先輩のファンだから行きたがるだろうけど…ユリナも行きたがってる雰囲気だった。


どちらか一方なんて選べないし、わたしが行かないっていう選択肢は失礼だから無いと思う。


どうしよう、と困惑したまま卵サンドをかじっていると、教室の入り口付近の女の子達がキャアキャアと騒ぎ始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る