第67話

「ずっと、探してたんだ───君のこと。」








心の奥底にじんわり響いたその言葉に、わたしは伏せていた瞳を上げて先輩を見た。


先輩は、その綺麗な顔に優しい笑みを浮かべてわたしを見ていた。


思わず、ドキリとした。


その瞬間、先輩は微笑んだまま無防備なわたしの手を取り、チケットを握らせた。


手から伝わる、ツルツルの紙の感触。






「──2枚?」


手の中を見て、思わずそう呟いてしまった。


うん、と先輩は頷くとこう言った。


「友達誘いなよ。女の子は一人でライブハウスなんか行きにくいでしょ。」

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