第34話

ぎゃはは、と甲高いユリナの笑い声が響いた。


「リキ?リキってまさか、力(ちから)って書くの!?」


「それが、その力(ちから)なんだよ。ウケるよね!プロレスラーみたいじゃない?あの地味でひょろひょろの中田には、似合わなくね?」


ユイもそれに合わせてケラケラと笑う。


「ね、ね。アゲハもそう思わない?」


2人同時にわたしを見て聞いてきた。


ユリナに至っては、目に涙すら浮かべている。








わたしには、2人が笑う意味がさっぱりわからなかった。


中田くんを馬鹿にしているような2人に、苛立ちすら感じた。







確かに中田くんは目立たなくて、いつも一人でいて。


綺麗な顔だし背も高いけど、髪型は坊主が伸びたような感じだしオシャレでもなんでもない。


それに休憩の度に教科書をかじりつくように見ている様子は、異様ですらある。


女の子達にキャアキャア言われるなんてことは絶対ない。


でも、だからといって彼を笑いものにする権利は誰にも絶対にないんだ。








───それに。


まだ真っ直ぐに見たことはないけど。


周りの空気に染まらず、ただ凛としている彼の目はきっと。


その名の通り、『力』強さで満ち溢れていると思った。


だから、わたしはこう答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る