第22話
店長に軽く会釈をして、わたしはカウンター横の入口から物置に入った。
そこで制服に着替える。
白いYシャツに黒い蝶ネクタイ、黒のタイトスカート。
黒髪を後ろで束ねたわたしは、実際の年よりは上に見えた。
「今はお客さん少ないから。窓、磨いてて。」
「はい。」
店長に言われわたしは物置に戻ると、乾いた雑巾と窓磨き用のスプレーを手に取り、店の外に出た。
駅前の大通りは、ちょうど帰宅途中の学生達で溢れていた。
皆溌剌とした表情で、からかい合いながら、笑い合いながら、彼らに背を向けしきりに窓を拭くわたしの後ろを通って行く。
暖かい風が、彼らの希望に満ち溢れた笑い声をゆるりと運ぶ。
彼らは、信じて疑うこともしていないのだろう。
───自分たちの、約束された未来を。
静かな水音が、夕方の喧騒に混じりわたしの耳元に届いた。
わたしはふと手を止め、ゆっくりと後ろを振り返った。
駅前の小さな噴水の周りには、今風の女子高生の集団が座って笑い声を上げているだけだった。
髪を触りながら、スマホを覗き込みながら、彼女達は繰り返し楽しそうにはしゃぐ。
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