エネルギー問題解消宇宙人
仮説宿屋
第1話 訪れは前触れもなく
地球上で幾度も話題に上ってはいるであろうエネルギー問題。人が人らしく生きるには必要不可欠な様々な物を動かし、快適に安全で楽な生活には必須だ。それが足りない、ならばと発電所を作っても作動させる手間と、維持稼働させるコストが嵩む、大量に発電できるけど原発は事故が怖い。
様々な問題点は日夜いろんなところで議論され、解決策などパッとは出てこない状況だろう。
ある日、そんな世界中に「何で溢れてる資源使ってエネルギーに変えないの?」なんて声が響いた。どの地域でどんな人間が聞いても意味が分かる、謎の言語だった。
声は言う「君たちが生きてるだけで周りに垂れ流している感情をその世界で一番使い勝手がよさそうな共通のエネルギー、電気に変換する装置の作り方を教えよう」ついでにその電気を沢山溜めておける装置もセットでね。
果たして声の言うことは事実だった。怪しむ人も沢山いる中、好奇心に駆られた技術者があっさりと装置を作り、近場のコンサートホールへと設置して見た。あまり大きな会場ではなかったが、その日の歌手は泣ける歌で有名な歌手だった。
一公演終わり、技術者が溜まったエネルギーの量を確認すると、国どころか地球丸ごとの一日の消費電力を賄えそうなほどだった。
この事が世界中に知れ渡ると様々な場所に装置はつけられた。映画館、コンサート会場、スタジアム。これら行われる様々な催しものは、人が沢山参加した方がエネルギーになるからと、無料どころか、観るとお金が貰える施設へとなって行った。生きて娯楽を消費するだけで発電できる。それまで満足に働けなかった人たちもこぞって発電のためだからと趣味を満喫できるようになった。人は生きているだけで素晴らしい、その言葉通りの世界だ。
どんどん発電するために人が集まる場所ならどこにでも装置が付けられた。
ある時、満員電車につけられた装置がとんでもない発電量をたたき出した。
原因は一人の少女が痴漢されたことによる膨大な負の感情であった。怖い、気持ち悪い、このおっさんしんじゃえと言ったものである。
国の恥となりそうな話であったが、その際の発電量がとんでもなかったので一応、世界中にその報告はなされた。
すると一部の地域や国で凄惨な事件が立て続けに発生した。なんならそのための施設まで作られた。手間と暇と情熱をかけて感動するような作品を作らなくても、その辺の人間に拷問とか行った方が簡単に発電できる。そうして多かれ少なかれ、どの国でもそういった発電が行われるようになった。もう何もしなくても向こう100年くらい世界中で電気使いたい放題できるほど電気が溜まっていても。
結局、それだけ溜まった電気も大部分が消し飛んだ。拷問を受けていた人が発電装置を壊そうとして、その際溜まっていた電気が暴走する形で解き放たれたのだ。作りやすかった装置は壊れやすくもあった。地上を荒れ狂うように流れ出した電気は電線などを伝い他の発電装置を壊し、そこでまた力を増し、文明圏内をすべて灰と墨に変えながらも止まることはなかった。
装置を地球にもたらした声が呟いた
「ここも同じか。まあこれだけ稼がせてもらったんだ。教えた甲斐はあったよ。おかげでまた別の星系へ行ける」
発電装置はいくつかは壊れなかったようだが、もはやそれを使うような物は地球上に残っていなかった。地表をなめ尽くした大破壊の後も壊れなかったそれは、生き残った人々にとって祈りの対象となった。その祈りで、たまる一方な電力がどうなったかは・・・。いわずともわかるかな。
エネルギー問題解消宇宙人 仮説宿屋 @tyokuju03
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