千年の祈り、あるいは想い(うらみ)

桜味

千年の祈り、あるいは想い(うらみ)

プロローグ Once Upon A Time...

 

 その《エスピリカ》はとても美しかった。

 透き通るような白い肌、光をまとったかのような銀色の髪。人間と違い尖った耳は、知性を感じさせた。 

 薄暗くよどんだ地下の街で、まるで星くずをまとったような"彼"を、兵士タンザは忘れることができなかった。




遥か、遥か昔の時代。

火山の噴火によりその王国――トルマーレは誕生した。

そこへ「エスピリカ」と呼ばれる超人的能力エスパーを持つ一族が、ふわり風に乗ってやってきた。

建国の王はその力を賛美し、エスピリカたちを迎え入れた。

快く受け入れてくれたトルマーレへ彼らは忠誠を誓い、王家に仕える身となった。

予知能力で予言をし、嵐の時には風を沈め、干ばつの際は雨を降らせるエスピリカを、トルマーレの民は精霊の子孫と呼ぶようになった。

 


しかし、トルマーレとエスピリカの共存は永遠には続かなかった。千年前、エスピリカは、王国の罪による火山の噴火が起こるといった不吉な予言ばかりするようになった。

火山神スピネルを冒涜したとして王は憤怒した。当時の族長を火山へ投げ込み、残ったエスピリカをすべて地下へ幽閉した。


精霊の子孫と崇められた彼らは悪魔の子孫とされ、地上で生きることを赦されなくなった。





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