精神病院の空

赤キトーカ

第一話 「起きてる?」




  【データ】


小説情報

タイトル  精神病院の中

作者  赤キトーカ

執筆状況  完結済

エピソード  31話

種類  オリジナル小説

おすすめレビュー ★30  10人

応援コメント 5件

小説のフォロワー 14人

アクセス数 4,857PV 


        【参考資料 甲五号の一】

 

From: m*ster@*o-ma.r*d

Subject:

あなたの作品、拝見いたしました。閉塞感と不安の中、本当にご苦労さまでした。

こんな世界が現実にあるのかと、リアリティを感じました。社会への疑問提起について考えさせられる部分もあります。

-中略-

これらの改善点を参考に、更なる深みと面白さを追求してみてください。

期待しています。


あなたとあなたの現実のために。


        【参考資料 以上】


  【データ 以上】




 俺は夢をみていた。

 

 その場所には鉄格子があったから、やはり保護室なのだろう。

 夢の中では、鉄格子は安心できるものだった。赤ん坊のころもベッドには柵があって、そこから出られなかった。出る必要がなかった。病院の中だけじゃなくても、窓ガラスをよくよく見ると、中に格子が入っている。

 そっか。これは俺を守ってくれるものなんだな、と、わかった。


 俺は夢の中で、その檻の柵に手を伸ばしてみた。


 握ると、

 

 暖かかった。


 実際には、冷たいようにも思えた。でもそれは柵の無機質さの持つ温度じゃなく、人の手の温度だった。


 朝なのか、夜なのかもわからない、仄暗い、一定の照明の下、俺と誰か……、

{俺はこの手を、知っている}

 

 彼が鉄格子の向こう側にいるから。


 彼の姿は見えなかったけれど、その手の冷たい温かさを離したくないと思った。

 

 鉄格子の柵の1本を俺と彼が一緒に握って、指を絡めあった。



 彼は「トーカ」と、俺を呼んだ。


 そしてこう言った。


「トーカがいるのは、中だと思う? それとも、外だと思う?」

 

 なんだ、そんなことかと思った。


「君はずっと病院の中にいた。君は自由なんかじゃない。だから……」


 不思議な気がした。

 それでは俺がいるのが、外ということに…‥?


 彼の姿がいつの間にか見える。

 

 いつものように、病院の患者が着る汚れた青い薄着を纏っているのが見えた。

 彼はうなづいて、不思議な言葉を言ったような気がした。


「continue;」


「え?」


 その言葉は直接頭の中に送り込まれるようだった。


「use code with caution.」


 よくわからないけれど、彼がそう言うなら、そういうことなのかな、と思った。




 ねえ。


 まだ眠ってる?



 

 起きてるよね?




 いるよね?

 



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