名も亡き化物は哭き縋る
絵之色
第1話 プロローグ
人の死とは、どれだけの価値と意味があると人々は評価するのだろう。
名が知られている存在のみが、価値があるのだろうか。
名が知られていない存在は、意味がないのだろうか。
何も語られていない白紙のページのように、自分にとって無回答なのだろうか。
それとも、なんの意思もないと切り捨てられる燃えカスなのだろうか。
その意図も、問いも……人々はなんと語るのだろう。
「……ああ、不思議だ」
一匹の化物は口にする。
まるでこの世の不思議への探求心に燃える学者のように。
まるでこの世の全ての善悪を踏破してきた読者のように。
彼の者は、問うのだ。
どこまでも無垢を気取る白き世界で。
どこまでも垢塗れな黒く塗りつぶされている自分はただ一人、回答を求めた。
「この世界は、正常と異常。どちらが正解なのかを投げかけようじゃないか、なぁ? ――――その他に分類される、その他大勢の皆々様」
「いや、いやぁ!!」
彼の者に握られた鋏は世界を分断する。
時に白と黒、有色と無色のように。
時に善と悪、正義と不義のように。
時に理想と無想、傲慢と無垢のように。
彼の者は、少女を分断する。
「ああ、楽しみだ。楽しみだ。楽しみだ。それこそ汝の存在理由……とくと思い知ってもらおうか。お嬢さん」
鋏に血が纏わりつく。
人々は、彼の者を
人々は、彼の者を
人々は、彼の者を
その意図は、どこまでも単純明快な正解だ。
月光に照らされた夜道にて、刃に滴り落ちる一滴の血が伝う。
狂気に満ちた凶器が彼の者の在り方を表わした。
赤く咲き誇った醜い少女の姿と共に黒尽くめの人物は囁いた。
「さぁ――――ゲームスタートだ」
――その者を、猟奇殺人鬼と人々は呼んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます