第24話 能力の秘密

俺たちはトモキア処刑後、ヴェスパーに報告に来た。


「ヴェスパーさん、報告に来ました。」


「おう、お疲れさん。

 今回はちと長丁場だね。

 どうだったかい?」


「ええ、トモキアと、ついでに悪さをしていたスポンサーの男も殺しました。」


「ほう、スポンサーの男までやってしまったか。

 あまりバレるリスクをあげてくれると困るなあ。」


「すみません、つい・・・。」


「まあ、ジェイクは正義感が強いからな。

 以後、このようなことが無いように。」


たしかに、一般人の殺しはまずかったかな。


今後は気を付けよう。


「また依頼を受注するかい?

 今回はなかなか大物だぞ。

 ジェイクの正義の目的にもなかなか合致している。

 どうだ、受けるかな?」


「ちょっとそれは後にさせてください。

 少しリラと話がありましてね。」


「そうか。結婚の話でもするのかい?

 式を挙げるならあたしも呼んでくれなー。」


「ち、違いますよ!」


そうして、俺たちはヴェスパー事務所を後にした。


---


自宅につくと、俺は話を始めた。


「なあリラ、この前のトモキアを拷問した時、俺の能力で出現する拷問部屋、やけに広くなったり拷問器具が増えたりしたが、いったい何なんだ?」


「ああ、能力の覚醒だな。」


やはり能力が進化したのか。


「そりゃあ良い。俺が能力をたくさん使って、頑張った証拠だな。」


「まあな。でも、いいことばかりではない。」


「なんだ、教えてくれ。

 ってか、そういう大事な話はもっと早く教えとけ!」


「時が来ればどうせ知ることになる。

 わざわざ前もって話す必要もあるまい。」


「そうだが、心構えをだなあ・・・。」


「悪い知らせだが、このままではジェイクは不老になる。

 私と同じようにな。」


不老だと?


俺も?


悪い知らせどころか、いい知らせじゃないか。


「不老などむしろ朗報だろう?」


「ふん。はじめはそう思うだろう。

 だがな、諸行無常というだろう。

 この世に変化が無いものなどない。

 私たち以外のすべてが変化する。

 私たちだけが変わらない、この世の理屈の外の存在。

 神になるということさ。

 それは永遠に続く孤独、退屈。地獄さ。」


「俺にはいいようにしか思えんな。」


「ふっ。孤独で退屈ではないか?」


「ああ、だって。

 同じ不老のリラがいるではないか。

 ならば寂しくも退屈でもない。

 だろう?」


「ああ、そうだな・・・。

 実はな、お前にこの能力を授けた目的は、私とともに過ごしてくれる人間を探すためだったんだ。

 永遠に、私と一緒にいてくれるのか、ジェイク?」


「ああ。俺はリラが好きだ。

 リラとならずっと一緒にいれる。」


俺がそう言うと、リラは涙を浮かべ、俺に抱きついた。


「私の能力は他人の心を読み解く能力だ。

 私もお前と同じ能力者。

 この世の理から外れた神であり、元は人間なのだ。」


そういうことか。


漠然と、神だから人間の思考を読めるとばかり思っていたが、リラも俺と同じ能力者なのだな。


「しかし、そうなると、リラに能力を与えた人もいるのだろう?

 その人と一緒に過ごす判断には至らなかったのか?」


「ああ、考えたさ。

 しかしな、久々に会ったら、その人は廃人になっていたよ。

 発現する能力は人それぞれだが、共通のルールがある。

 それは、正義のために能力を使うことだ。

 その人は正義を追求したが、その果てのなさに絶望し、廃人と化したのだ。

 しかも、もしこのルールを破れば、心を失う。つまり廃人になる。

 何にせよ、死ねずに廃人になる未来しかないのだよ、このチカラはな。」


「この能力のことはよくわかった。

 教えてくれてありがとう、リラ。

 隠し事はもうないな?」


「ま、まあな。

 なにかあればその時に言うさ。」


まあ、こいつに何を言っても聞かないか・・・。


「しかし、このまま能力を使い続ければ俺も神の仲間入りかあ。」


まさか自分が神になるとは思いもしなかった。


「神と言っても、ジェイクが今想像しているような神ではないぞ。」


え、そうなの?


リラは続ける。


「あくまで、世界の理から外れた存在というだけだ。

 本当の神は他に存在するらしい。

 この能力を使い、ある極地にたどり着いたものにのみ、本当の神の声が聞こえるそうだ。」


ほう、そんな逸話があったとはな。


「じゃあ、俺たちは神の使いってことで、天使っていうほうが意味的にはあっているんじゃないか?」


「はははは。

 それは確かにそうだな。

 わたしたちは天使だ!」


「ここに、永遠に2人一緒という、天使同盟を新たにしよう!」


「ああ、そうだな。ジェイク。」


こうして、俺たち天使は契約を新たにしたのだった。



=== 作者あとがき ===


次回、最大の悪党の殺人を受注!


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