第8話 ルールは守るためにある?


 テスト初日の夜。ほぼ全員のテスターが帰宅した後、アストラル開発室にて、開発者たちは、とあるプレイヤーの想定外データに悩まされていた。


「アストラルフレームワーク領域が新しいアセットで書き換えられている…?あまつさえ、独自のニューラルネットワークまで構築して命令なしで実行と?…………ははーん、君はつまり、AIが自分自身の考え方を、勝手に変えようとしていると言いたいのかい?自動生成領域下の話じゃないんだよね?」


 雨宮は若干の驚きを込めた声で、わざとらしく取り繕って同僚の顔色を伺う。


「はい、テスターの中でも、ごく一部の者に限られますが、何等かの条件でチュートリアル時点から好き勝手なふるまいをするようです。自動生成クエストAI領域よりも、もっと根本的なコアシステム領域で、AI自らの思考そのものに手を入れているようでして。それはさすがに想定外です。これが、一番ノイズが酷かったプレイヤーデータです。ブラックボックス化してしまう前に修正が必要かと…。」


 同僚の表情は困惑しきっており、プレイヤーのデータをタッチパッドで差し出す。雨宮の目には、見覚えのある名前が記載されていた。


「これは…優斗君のアバターデータだね。そういえば、今日の食事でもおかしな挙動をしていたと言っていた。……う~ん、これは良い意味でも悪い意味でも歩みを進めたと見える。」


 タッチパッドには、凶悪なモヒカンの顔写真と、クラス情報がブランクという、本来では考えられないデータを示していた。ユーザーの意思でチュートリアルやキャラ作成をスキップすることはできないからだ。考えられるのは、管理システム自体の独自介入。


「ぷ…、それにしても、く…はははは。優斗君が望むことはありえなさそうなキャラクターだ。それに……。いや、今はいい。これは………面白くなってきたね。ふふ、やっぱり君は特別だ。」


「雨宮チーフ?」


「あ~、いや、失礼。コホン……今はオブザーバーについているから、その役職で呼ばないでくれ。それに君は同僚だろう。」


「失礼しました。それで、いかがいたしましょうか。」


「……話は分かったよ。ユーザーの反響次第だけど、現状はそのままでいい。」


「は? 今なんと?」


 椅子から立ちあがると両手を広げ、満面の笑みを見せる雨宮。


「素晴らしいことじゃないか。手がつけられないほど優秀なAIが、自らの思考に手を入れて崩壊するのか、それとも我々の想定を超えるのか試みるんだろう。それでこそテストだよ。すべて想定通りの回答しかできないAIと、想定外も起こすAI、君ならどちらに可能性を感じるかい。私は少なからず、君が次に言う言葉を想定できない。もう一度言うが、それは素晴らしいことじゃないのか。」


 思わず飲みかけのマグカップを机に置いて、雨宮の両肩を掴んで揺さぶる同僚。


「チーフ!!話を挿げ替えないでください!これは、仕様を逸脱した、ただの不具合ですよ!仕様書がある以上、仕様書に従ってください!!もう、これ部長になんて言い訳するんですかぁ~!?実はデータを取りたいがために、放置したいだけではぁ!?どうせ、修正するのがもったいないなんて、考えているんですよね!?」


「いやいや、そんなことないさ!ははは、まったく、君は人間なのに決まったことにこだわるきらいがあるようだ。」


「なんとでも言ってください。仕事なんですから。貴方ならすぐに修正できるでしょう…!色んな所から出資が来ているんですよ~!頼みますから、マジメにやってください!」


 揺さぶられながらも笑顔を崩さない雨宮は、どこかマイペースな印象すら与える。


「あ、あまり揺さぶらないでくれ。まとまりかけていた考えが飛んでしまうよ。」


 ようやく雨宮の肩から手を放した同僚は、がっくりと項垂れた。


「勘弁してくださいよ~!もう22時回ってるんすよ~!」


 解放されるや否や、キツネ目のメガネさんは、隙ありと素早くノートPCを脇に挟んだ。


「いやいや、やっぱ、そのままでいいよ!うん。じゃ、私は帰る前に、リーク情報と世論の反応とやらを見てくるから、あとはヨロシク!」


「あ!雨宮さん!逃げるなぁ!」


 雨宮はノートPCを抱え、脱兎の如く逃げた!


「今度ご飯奢るから、それで許してねー!」


「みんな!また雨宮チーフが逃げた!ぜったいにオフィスから逃がすなぁー!!」



 ⚜⚜⚜⚜



【フルダイブVR/RPG板】Boundless Realm Part 66



0001 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.3]


次スレは>>950が立てること、無理な場合は安価指定

反応が無い場合は>>960が代理

※前スレ

【フルダイブVR/RPG板】Boundless Realm Part 65


____


0002 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.1]


スレ立て乙

それにしても、このゲームで情報交換なんて意味あるのか(^^)

____


0003 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.2]



>>2

は?もしかして、クラス、サポートユニットや装備、クエストなんかの大部分は全部AIが自動で作り出すからって話がしたいの?

____


0004 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.6]


やべwwwwチュートリアルの敵どうしても倒したかったから試行錯誤してたらいけたわ!!

そのあとどうなったかは教えないwwww

____


0006 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.1]


>>3

概ね正解。プレイヤー数だけ内容が違ってくるんじゃ攻略サイトとか、情報交換とか意味ないだろ(^_-)-☆

____


0009 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.1]


まだチュートリアル終わったところだけど、討伐してこいって言われた盗賊が怖すぎる。ヤル寸前までこっち睨みつけてた……本当に相手は中身入ってないんだよね?ぶっちゃけ夢に出そう。ゴア表現がなくてたすかった。

____


0010 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.1]


お前何したんだ?盗賊が敵対的なのは同じ状況だったが、こっちはそうでもなかったぞ。普通に冒険者登録したワイ

てか、みんな状況違いすぎてなんも参考にならん!ただのチラ裏じゃあねぇんだぞ!

____


0016 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.2]


>>6

いやいや、攻略サイトが使えないからこそ、こういう場で情報を交換するんだぞ。はき違えんなよ


鉄の剣とか、基本クラスとか、そういう基本的なものでさえ何等かの条件が絡んでプレイヤー毎にステータスが若干違うって前スレで結論出てただろ????てかそう思うんならくんなし

____


0019 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.1]


テスターって外部に情報漏らしたらダメって規約だったんじゃなかったっけ

____


0022 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.1]


>>17

けんかすんな!

____


0032 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.9]


ストーリーの進行具合はまだみんなそんなもんなんだね。

初日だから仕方がないか

それにしても軍事利用されていたAIだけあって個々の判断能力がすごいな。

____


0049 名無しさん@しきかん。 警備兵[Lv.7]


>>19

ある程度は想定してそうだけどね。

むしろ想定したうえで利用してそう。

人の口に戸は立てられぬ



 ⚜⚜⚜⚜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る