『合作の恋愛小説を書くから』という理由で、学内一可愛くてからかい好きな文藝部部長から迫られています。 旧題:合作小説の書き方

往雪

プロローグ(※本編とはあまり関係ありません)



 いつもは静謐せいひつをたたえている文芸部の部室に、ドン、と鈍い音が響く。


「──ずっと前から好きだったんだ。別にいいだろ?」


 壁に手を着いたカズキは、私のあごをくいっと持ち上げると、甘い声で囁いた。


「だめだよ、カズキ。……ここ、学校だよ?」


 羞恥しゅうちから逸らされようとする、真っ赤に染まった私の顔。消え入りそうな声。

 だけど、その言葉の内容とは裏腹に私は抵抗できずにいる。


「……どうせ部室には誰も入ってこれないさ」


 強引に肩を抱き寄せられ、私は思わず目をつむった。


「あ、カズ──っ、んっ」


 ふいに口がふさがれる。まず柔らかい唇の感触がして、それからもっと多くを求めるように口内へと舌が侵入してくる。舌と舌とが自然に絡み合って、吐息を交換する。

 お互いの息が切れるまで、深いファーストキスは続いた。


「っ……はぁ、はあ……んっ、カズキ」


「アヤカ……」


 互いの名前を呼び合い、ごく至近距離でとろけた目と目が合う。

 肩に添えられていた手が私の背中に回され、ぎゅっと強めに抱き締められる。


「……今日、家。誰もいないから。続きはそっちでなら、いいよ」


「わかった。……じゃあ、一旦帰ろうか」


「うん……」


 内側から閉められていた部室の鍵をカズキが開け、私の手を取って歩き出す。


 ああ、これから大人の階段を上っちゃうんだ……。

 なんてことを、私は考えていた。



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