【自主企画参加】盗まれたプラネタリウム

野口マッハ剛(ごう)

ドッキリの盗まれたプラネタリウム

 冬の映画館にオレと彼女は入る。お互いに厚着をしていても寒いねなんて言い合う。今日はレアな映画を観に来たのだ。


 盗まれたプラネタリウム。彼女から聞いた情報だと全国でもそんなに上映はされないと言う。


 オレはフリーター、彼女は付き合って一年目。付き合い記念日として映画館デートを選んだオレたち。


 ポップコーンにジュース、チケットはあらかじめ彼女が用意したもの。小悪魔メイクの彼女は何かを企んでいる様子。


 最前列に座る。よ~し、今日はレアな映画を楽しむぞ。上映される。


 すると、彼女が小声でオレにささやく。


「ねえ? キスしよう?」


 ジュースを吹き出しそうになる。他にもお客さんは観ている。そんなの今は出来るか⁉


 クスクス笑う彼女。くそー、小悪魔なささやきに映画の話がいまいち頭に入って来ない。


 でも、この映画は低予算なのかな? なんだかコメディ寄りだしね。


 オレがアハハ、そう笑っていると、次に彼女はこう小声でささやく。


「ねえ? そんなに今日の見たいの?」


「な、何を?」


「あたしの……?」


 やべえ、今日の彼女はやたら積極的だな。


 それならば、オレは彼女の顔に顔を近づける。


 そこで。


「はーい! ドッキリテレビでーす! 今日で付き合い記念日が一年目の二人にドッキリ成功? でーす!」


 映画がピタッと止まって、場内がパッと明るくなって、拍手が上がる。


「どうでしたか~? 今日の彼女さんは積極的でしたねー(笑)」


 マイク持った人とテレビカメラを持つ人がオレをうつしている。


「ドッキリテレビかー⁉ ヤられました(笑)」


「付き合い記念日一年目、おめでとうございます! 末長くお幸せに!」


 盗まれたプラネタリウムと言う映画はつまりはこのドッキリのためのものだった。


 くそー、ヤられました(笑)


終わり

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