応援コメント

すべてのエピソードへの応援コメント

  • 短編への応援コメント

     売り物の本を持ち込めるカフェを書店に併設することには、僕も反対です。
     書店が売り物の本を大切にしなくてどうするんだ、本と人の出合いを大切にしなくてどうするんだ、というのも全く同意見です。
     しかし、いわゆるなろう系作品も、多くの人に様々な批判を受けながら店頭に並べられ続けているわけですから、「文芸とは何か、本とは何か、書店とは何か」みたいな本質的な話をしても、「(それは分かるけど、)お金は必要だから……」と資本主義の理屈を振りかざされて終わりかもしれません。
     まさにそういう社会が特定の価値観や数値で画一化されようとしているときこそ、文芸や文学、芸術といったものの出番になるはずで、現代アートが「訳分からん」と言われながらやろうとしていることはまさにそれだと思いますが、最近の出版業界にどれほどその自覚があるか、僕には疑わしいです。

     ブックカフェなるものを擁護する気は一切ありませんが、その意図や利点についてちょっと思うのは、もしかするとネット通販との差別化を図っているのではないかということです。
     ネット通販には、書店に行く手間がない、書店内を歩く手間がない、中古本なら安く手に入ることがある、といった利点があり、コロナ禍でさらに利用者が増えた、言い換えると、わざわざ書店に出向く人が減った、という事情があるように思います。
     書店としては、ネット通販では得られない何かを新たに提供する必要性を感じて、出した答えがブックカフェなのかもしれません。
     なろう系作品もそうですが、おそらくそれで実際にお客さんが増えているからこそ、徐々にはあるでしょうが、広まっているのでしょうね。

     とはいえ、本作で指摘されているように、未購入の本がカフェで汚されたらどうなるんだという問題があります。
     汚したら即購入、ということになれば、カフェの利用者が減りそうですが、もちろんカフェはそれ自体が飲食店なので、作ってしまったからには、「経営」が悪化して在庫が余る事態は困るでしょう(ブックカフェが経済的な効率性を重視するならなおさら)。
     お客さんは意図せぬ出費を嫌って、汚した本をそのまま棚に戻すようになるでしょうし、そもそもお客さん自身は本を汚したことに気付かないということも考えられます。
     ただ、もしお客さんが本を汚し、店側もそれを容認してしまった場合、他のお客さんが汚れた本を買わされかねないのもそうですが、害虫の類が本を傷めるようになるはずです。
    (町の図書館にも本が汚れるリスクはありますが、館内は飲食禁止、本の返却後に図書館スタッフが傷や汚れを確認しているはずなので、対策は講じられていると言えます。)
     そうなると、消費者の間で「ブックカフェは本が汚れていたり、虫が出たりするから、ネット通販が安全だよ」というイメージが広まるような、ブックカフェ自体の首を絞める事態が起こってくるでしょう。

     書店としては、本が汚されたらすぐに察知するか、本が汚されても害虫の発生を防ぐか、どちらかに絶対の自信があるのでないと、カフェの併設なんて上手くいかないと思いますが、どちらも店側の管理体制ではなくお客さんの良心に左右されるので、現実的とは思えません。
     書店の経営建て直しや、ネット通販への対抗という点から言っても、ブックカフェは悪手なのではないかと思います。

     長文失礼しました。