第19話 最終決戦

薔薇「どうする?」


アン「どうするって何が?」


薔薇「アルスル来るよ?」


アン「アルスルが言ったように、私ももう本に書いてる。というかここまで来たらなるようになるしかないだろう」


薔薇「ここで超展開魔法、デウス・エクス・マキナ発動や!!」ピカッ


アン「これ以上何かをする気は無いよ」


薔薇「お前……死ぬのか?」


アン「それが唯一のハッピーエンドだ」


アルスルがやってきた場所は、始まりの村だった。ここはアルスルが幼馴染みと共に育った、故郷である。


そしていつもの場所、いつもの家、いつもの庭先に…いつも椅子に座って、本と薔薇がよく似合う女性が居た。


アルスル『ここが異界かぁ~、なんか見覚えあるなぁ』


アン「アルスル、久しぶり。」


薔薇「…」(ただの薔薇のふり)


アルスル「って俺の村や!なんでや!散々苦労して異界に行ったら俺の故郷だった件について」


アルスル「おや?アンさん、久しぶり」


アン「ああ、実は私がアルスルの倒すべき魔王だよ。本名はアンドレギュヌス、長いからアンでいいけどね」


アン「この一輪の薔薇は私の造物であり主神、ローズナイツだ。行け!」


薔薇「ギャギャギャオーン」


アン(なんだその演技)


一輪の薔薇の根が花瓶を破り裂き、そのまま巨大な数本の足へ、茎は屈強な胴になり、真っ赤な花びらに巨大な目が生えた。


アルスル「ええ・・・きもちわる、キャラデザ誰だよ・・・」


アン「私だが?」


ローズナイツが胴体からトゲを伸ばす。触れればすぐに骨まで通るだろう。誰も近寄れない。


アルスル「これどうやって攻略するんですか?」


薔薇「グワハハハ」


アン「弱点は炎だ」


薔薇「!?」


アルスル「ファイアー・忍者ソード!!!!!」ズバボオオオ


ローズナイツを倒した!


アン「おめでとう!アルスル!」


アルスル「で、今度はアンさんが形態変化して二回戦だろ?」


アン「こんな醜い化け物になるわけないだろ」


薔薇「?」


アン「だが私には普通の攻撃は通用しない。神殺しの剣でもなければ死なないだろうな」


アルスル「えーっ、道中そんなイベントあったっけ・・・?」


アン「おい!思い出せ…アルスルの母、13話とか16話だ」


アルスル「とりあえず今は無いです」


アン「はぁ…手の掛かる勇者だ」


少し待つとアルスルの母、ミスティルエルがゲートホールを通ってやって来た。


ミスティルエル「夢なんて下らない。現実は失うばかり。この生のどこに希望がある?」


アルスル「母さん!覚めたようだな」


ミスティルエル「アルスル!貴方の人生はどこで間違ったの?旅路?勇者に選ばれたから?故郷?私が産んだから?こんな不細工で愚図で気持ち悪い性格の人間がいるなんて!」


アルスル「酷すぎるだろ」


アン「あーもう!!!手の掛かる!!!」


ミスティルエルは落ち着いた。このアルスルへの憎悪は結局期待の裏返しである。期待は幻惑で散々見た通りだ。理想は人間を満たすものではない。


ミスティルエル「こんなカスだからこそ、鍛え甲斐があるってこと。魔王を倒せば今日のところは許してあげる」


アルスル「はぁ、俺も別の母が良かったよ」E.神殺しの剣


アン「アルスル、こんな形ですまない。本当はもっと感動的で、幸せで、腑に落ちるようなのを君にあげるつもりだったのだけど」


アン「本当に思い通りにならない。また別のアルスルには、そうしてあげたいね…」


アルスル「俺は何人目のアルスルだよ」


アン「正真正銘、一人目だ。だからこそこうなってる」


アルスル「ふん、生まれ変わったらもっと良いアルスルにしろよっ!!」


アルスルの勇者スラッシュ!


魔王アンドレギュヌスは倒れた!


H A P P Y E N D

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