物書き「タイトルは何にしようかな」

ズルロウ

第1話 旅立ち

私はアン。小さな瓶に生けられた薔薇と共に物語を書こうと思う。


アン「薔薇様、始まりはどんな感じがいいかな?」


薔薇「まずテーマから一貫した部分を作りなさってはどうかな?」


アン「はい、えーめんどくさいので決めません。じゃ主人公は『勇者』…名前はアルスル君。」


勇者アルスル、小さな村に住む16歳の少年。彼は今後自分の身に起きる壮大な物語を未だ想像だにしていなかった……


具体的に言うと戦士や魔法使いや僧侶なんかを仲間にし、悪しき魔王を討ち倒す使命を持つのである。


薔薇「まるでテンプレじゃないか!」


アン「いいのいいの、けっきょくこんな風なのが一番楽しいんだから」


さて、アルスル君はこの村の外れで謎の洞窟を見つけ、そこで魔物とやり合ったりして神の啓示を受けるのです。


アン『アルスル、アルスルよ…。汝は選ばれし勇者、この世界を救う者。そなたは今からこの小さき村より旅立ち人類のために戦うのである。』


薔薇「若干の表記ゆれが」


アン「アルスル『ええ!しかし、私は只の一介の村人。何の力も無い私に何ができましょうか!?』って感じで」


アン『私があなたに加護を授けます。自信を持って下さい、これさえあれば何もいらない、万事順調、休す事無し。』


薔薇「加護とは一体?」


アン「主人公補正みたいなものさ、例えば彼の正義の心は決して折れなくなり、皆が彼を好きになる。上手くいきゃハーレムだ」


こうしてアルスルは旅立ちを決意した。小さな村は彼の話題で持ち切り、皆が彼を祝福した(ほら、もう効果が現れてる。)


村人「勇者アルスル万歳!」

村長「お前は儂の誇りじゃ」

母「アルスル、こんなに立派に育って…その嬉しさか、別れの悲しみか、分からないけど涙が止まらないわ。ちなみに父は死んでいるがあなたは元気でね」


アルスル「ああ、みんな、お達者で!」


薔薇「奴はどこへ向かうのだ?」


アン「ん?んー、えっと、」


アルスル「アンさん!あなたもお元気で」


いつも椅子に座った彼女は、その時もいつもと変わらず薔薇を愛でながらいた。彼女は物書きで、俺の旅をいつか本にしてくれるという。


アン「ああ…アルスル、君は多分これから大陸の五ヵ国を周るんだろうね。聖王国とかあるだろう?お土産を楽しみにしてるよ」


アルスル「ええ!では!」タッタッタッ


アルスルは五ヵ国の一角(名前等未定)への道へ沿って行った。彼の旅に幸あらんことを。


薔薇「はやく!辿り着く前に色々作らないと!」


アン「落ち着いて!この道を1万キロとかに伸ばせばいい!」


薔薇「そんな初手があってたまるか!」


アン「うん…まあまず世界観を大陸に納めといたグッジョブと…あと異界も置いておこう。世の魔物はここより生まれいづる。」


薔薇「だから一貫したテーマを作っておけと」


アン「うるさい!性に合わないんだそんなのは。これからの大冒険に運命の偶然のような一貫性は無い!世界は複雑なのだ」


薔薇「じゃあラスボスはお前な」


アン「はぁ?ラスボスゥ?今見た通り始まりの小さな村の只の女性ですが」


薔薇「実はそいつが世界を構築している真の黒幕なのであった…」


アン「……ちょっと面白いかもな。目障りな赤も役に立つじゃないか」


薔薇「一応お前の神なんだがな?」


物書きアンの創作と勇者アルスルの旅路は続く……。

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