スキル「コピー」が不便すぎる!

@kumayarooo

スキル「コピー」

「次は……駅です」


アナウンスが流れ、目的地に着いたことが分かる。

イヤホンを外すと、扉の前に駆け寄った。


(今日も疲れたなー)


慣性によって体が前に揺られると、扉が開いた。

そして、同時に階段に向かった。

これが俺の日常だ。




(やっと金曜日だ!)


5時のチャイムが街に響く。

俺は家に帰っていることを実感し、少しスキップ気味に帰り道を歩いた。


その時だった。


「え?」


地面が無い。


足で踏むはずだった場所に半径5メートル位の穴が出来ている。


「どゆことおおお……!?」


俺は重力に身をゆだねて落下していった。




「どこだここ!?」


気が付くと知らない場所にいた。

ただ水が滴り落ちる音だけが聞こえてくる。


「洞窟……だよな?」


ごつごつした岩で構成されている壁と床を見渡した。


ここは一本道になっているが、約50メートル先で左右に分かれているようだ。


「テレビのドッキリとかかな?なら、テレビ的にも進んだ方がいいよな……」


俺は歩き出した。


「ちょい怖いな」


恐る恐る歩いた。

すると、すぐに分かれ道が目の前まできた。


(右か……左か)


考え込もうとしたその時、左の道から足音が聞こえてきた。


「なんだ!?」


その直後、左の角から緑の肌をした子供のような生物が現れた。


そう、ゴブリンだった。


彼は血塗られた棍棒を大きく上げて威嚇してきた。


「え、え!?」


受け入れがたい状況に変な声がでた。

すると、ゴブリンは飛び掛かってきた。


「お、おい!まじかよ!」


俺は腕をクロスして防御した。

その瞬間、腕が熱くなった。


「痛っ!?」


反射的にゴブリンに接近してしまった。


「ここでやるしかないよな!」


俺はゴブリンの頭目掛けて、素早く拳を飛ばした。


「グギギ!?」


カランと乾いた音が洞窟に響き渡る。

どうやら棍棒を床に落としたらしい。

俺はそれをすかさず拾い上げた。


「喰らえ!」


棍棒を力に任せて振り下ろした。


「グギ!?」


ゴブリンは床にひれ伏した。


「ごめんなっ!」


俺は棍棒で頭を砕いた。


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「初めてのモンスターを倒しました。

スキルを付与します。

続けてスキルを確認しますか?」

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とどめを刺すと、無機質な声が頭に響いた。


「確認!」


心を弾ませながらそう言った。


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スキル:コピー

level:1


10秒以内に触れた対象のスキルを使うことが出来る。


同時に複製可能なスキルの数:1

複製時間:10分

複製するスキル:ランダム


コピーしたスキル

なし

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すると、目の前に半透明な画面が現れた。


「おお!強い……のか?」


俺は微妙な反応をした。


(早速コピーするか!)


俺はゴブリンの死体に手を触れると、こうつぶやいた。


「コピー」


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スキル「身体強化」をコピーしました。


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