あなたが私を殺すまで

藍色の星 みり

第1話 邂逅

「もし…が聞こ…て…なら…いつ…私…とを」


 誰かの声が頭に響く、途切れ途切れでなんと言っているのか分からない、だけど次の一言ははっきりと聞こえた。


「殺しに来て。」


 そこで目が覚めた。さっきの声はなんだったんだろうか、それを疑問に思う暇もないのだ、35歳独身サラリーマン、仕事場に向かうためご飯を食べ、支度をし車に乗り向かう、なんの変哲もない日常だ。

 仕事を終わらせて変える途中、信号無視をしてきた車にぶつかられ意識を失ってしまう…そして目を開けたと思ったら、誰か分からない人が自分の前に居た…空間があやふやで、現実世界では無いのだろう。


「こうして会うのも何年ぶりかしらね、もっとも、あなたは覚えてないでしょうけど。」


 あなたは誰だ、と言おうとしたら。


「あなたは誰?、とでも言いたいのでしょう?、申し訳ないけど、教える訳にはいかないのよ。」


 その後も自分が喋ろうとしても、その思考が先読みされてるかのような感覚に陥った。


「もっとゆっくり話したいところなんだけど、もう時間みたいね、また話しましょうね。」


 そうして視界がぼやけていって…目に入ってきたのは病院の天井だった。医者が駆けつけて来てこう言った。


「良かったです、1週間以上も目を覚まさなかったので。」


 そんなに時間が経っていたのか、感覚的には30分も経っていないような気がするのだが。気を失っている間、何かを見ていたような気はするのだが、記憶にもやがかかって上手く思い出せない。


「普通なら2日ほどで起きるはずなのに、1週間以上も目を覚まさなかったので、死んでしまったかもとも思いましたが…とりあえず良かったです。」


 そう言った医者は安堵の表情を浮かべていた。

 結局あれはなんだったのか、よく分からないままだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたが私を殺すまで 藍色の星 みり @aihosi_miri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る