盗まれたプラネタリウム

とろり。

1話完結 盗まれたプラネタリウム



 20XX年、地球の空は灰色に包まれていた。止まない戦争が地球を絶望の地に変えたのだった。

 各国は一つの団体として統合され、いずれ訪れる終わりの時をただ待っていた。


 病んだ人々の心を癒やすのは、トーキョーで天文学者たちによって作られた小型プラネタリウム。普段はポケットに入るくらいの大きさに収まっていて、電源を入れると大きく展開し星々を映し出す。それはまだ地球が青かったころの夜空を再現できる。


 だがある日その小型プラネタリウムがなくなった。厳重に保管されていたはずが何者かによって盗まれた。

 かつての繁栄から1%程に減少した人類の光を奪ったとして、みなが皆、盗人を探し出すのに躍起になった。


 盗んだのはまだ幼い少年だった。

 少年はポケットに小型プラネタリウムを隠し、廃病で隔離されている妹の元へ走った。そして隔離された部屋に到着すると、小型プラネタリウムをポケットから取り出し電源を入れた。カードケース程の小さな箱が大きく展開し暗い部屋を照らし出した。


「ごらんよ、これが星だ」

「…………きれい……」


 少年とメアリは星々の姿をしばらく見つめていた。


「俺、メアリのことがどうしても気になって……」

「……いいの。気にしないで、お兄ちゃん…………」

「元気になったら、また二人で遊ぼうな」

「……うん。」


 メアリは微笑みながら涙を流すと、ありがとうと力無く言った。それがメアリの最後の言葉だった。そしていつまでも、少年は動かなくなったメアリの右手をただ優しく握っていた。

 星を見たがっていたメアリ。少年はまだプラネタリウムの電源を消すことができなかった。



おわり




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2024年9月20日

少し修正しました。


2024年9月21日

たびたびスミマセン。

少し修正しました。



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盗まれたプラネタリウム とろり。 @towanosakura

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