何をすれば、ステップアップなのか?

白鷺(楓賢)

本編

私は現在、障害年金を受給しながら生活をしている。就労継続支援B型事業所に通い、作業をして少しの工賃を得ている。半年に一度、目標を立てる機会があり、将来について考えるが、実際のところ、先のことが見えてこない。


A型事業所に移行するべきなのか、障害者雇用を通じて一般就労を目指すべきなのか、それとも全く別の道を模索するのか。ふと、そんな疑問が頭をよぎることがある。両親は私に一般就労を望んでいるが、心の奥底では、今のB型事業所に留まりたいという気持ちが強い。果たして、一般就労やA型事業所に行くことだけが、ステップアップの道なのだろうか。


この自問自答を何度も繰り返してきたが、未だに答えは見つからない。障害年金だけで両親が亡くなった後も生活を続けることは現実的ではないだろうと考えている。だからこそ、収入の安定や自立に向けた一歩を考えなければならない。しかし、その一方で、自分に合わない環境に飛び込むことは、体調や精神状態に悪影響を与えかねないため、慎重な判断が求められる。


私は、大人数の中では力を発揮できない。少人数制で、できれば一人で取り組める軽作業が理想的な仕事だと思っている。これまでA型事業所や一般就労の見学にも足を運んだことがあるが、大人数での分担作業や、一定のペースで行わなければならない環境が多く、私にはハードルが高いと感じた。そのため、見学のたびに「ここでやっていけるのだろうか」と不安になったことを覚えている。


私の課題はまだ多い。例えば、連勤が続けられないことや、すぐに疲れてしまうことなど。これらの課題を解決しない限り、次のステップに進むことは難しいと感じている。それでも、今できることから一歩一歩進むしかないのだろう。


「ステップアップ」とは、社会的に見て上のポジションを目指すことだと考えがちだ。しかし、私にとってのステップアップとは、必ずしもA型事業所や一般就労への移行だけではないかもしれない。自分自身の体調や精神状態を維持しながら、少しずつ新しいことに挑戦し、成長していくことが私にとってのステップアップなのかもしれない。


たとえ小さな一歩であっても、自分にとっての前進であれば、それがステップアップだと胸を張れるはずだ。未来に向けて「どう進むべきか」を考えるとき、他者の期待や世間の評価に囚われるのではなく、自分の心が本当に望む道を見つけることが最も大切だと、今は思っている。


私にとっての理想のステップアップは、まず自分が無理なく続けられる仕事を見つけること、そして少しずつ社会との接点を増やしながら、自分のペースで成長していくことだ。それが、例えどれだけゆっくりであっても、私の進むべき道であると信じて、これからも探し続けたいと思う。

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