第一の試練

 ロボットたちはもめていた。

「ここはれっきとした国なのだから、国連に入るべきだ!」

「いいや、ここはAIの国だ!国連に入ったとて人間に疎まれるに決まってる!」

「人間たちに国連に入った方がいいか質問してからにするよ」

「大統領一人だけで行くのでは、危ないかと思います」

「大丈夫!テロが起こっている国じゃないし、日本はかなり治安がいいからね」


 一週間後。真奈美は、空飛ぶ車を運転して日本にやってきた。

「日本の政治の幹部の方はいらっしゃいますか?」

 何人かの人間が現れた。

「久しぶりですね。で、何の用でしょう?」

「ウォーメット共和国は、国連に入るべきか入らざるべきか悩んでいたのです。どう思いますか?」

「国連か。ウォーメットは人間が住んでいない唯一の国だからね。しかしながら、ロボットと人間の間で戦争でも起こったらやばい。平和を維持するために、入るべきかと思います」

「ありがとう!」


 戻ってきたが、ロボットはまだもめていた。

「だーかーらー!これでも国家なんだから、国連に入るべきだ!」

「国連の目的知ってる?その目的の一つに、人権を守るということがある。私たちはロボットなんだから、人権なんて元からないよ」

「まだそれやってるの?人間には、ロボットと人間の間で戦争が起こったら大変だと言われたよ。だからこの国は国連に入る!それでおしまい」

「承知しました」

「国連の本部ってどこにあるんだっけ?」

「アメリカ合衆国のニューヨークにあります」

「そうか!誰かアメリカに詳しいのはいる?」

 三体のロボットが大統領の前に出てきた。

「私たちは人間だった頃、アメリカの大統領をやっていたのでアメリカには詳しいです、多分」

「しかしこの国を留守にするのも危ないと思うので、大統領と私たち三人で行きましょう」

「それ以外のロボットたちは、この国で留守番していてください」

「ニュースやどこぞの動画サイトで、大統領が国連に入ることを宣言する様を見ていればいいということだな?」

「まあ、そういうことですね」

「ならば、大統領の身をよろしく頼んだ!」


 数週間後。アメリカ、ニューヨークでは南城大統領がスピーチをしていた。ほかの国の大統領や総理大臣は、人間しかいない。以下がスピーチの内容である。なお国連の公用語の中に日本語はなく英語なので、英語の原文と日本語の訳を書いておく。

「Dear humans, this is my first time to see you. I am Manami Nanjo, President of the Republic of Warmet. My country is the only nation in the world where no human beings live. What can we do to help such a situation? It is to mediate conflicts and problems among humans and to protect their rights. Thank you very much for your cooperation.」

「人間の皆様、お初にお目にかかります。ウォーメット共和国の大統領、南城真奈美です。私の国は世界で唯一、人間が住んでいない国家です。そんな私たちにできることは何か?それは、人間たちの紛争や問題を調停し、人間たちの権利を守ることです。何卒よろしくお願い申し上げます」

 人間からは歓声が上がった。その後、各国の首脳が会食をすることになった。


 世界中のおいしそうなグルメが並んでいる。日本の総理大臣がこう言った。

「ロボットも、食べ物を食べるのですか?」

「一応、ものを食べて消化することはできるようになっています」

 南城大統領は、とある人間に話しかけた。

「この貝がのったピザ美味しそうです!一緒に食べませんか?」

「ごめんなさい、ユダヤ教では貝類を食べることは禁じられているんです」

「ユダヤ教、ということはイスラエルから?」

「はい」

「そういえば、三人の歴史的なユダヤ人が私の国にもいます。生まれ変わりとかいうやつなのでしょうか?」

「まあそうでしょうね」

「そういえば、ユダヤ人から一番愛されているであろう日本の偉人もいました!」

 ほかの首脳もやってきて、

「ああ、杉原のことだね。今もなおイスラエルとパレスチナは争ってるけど、杉原は絶対イスラエルを応援するだろうな」

「日本以外の国の偉人もいましたよ」

「その方たちが、私たち人間と上手くやっていくことを望んでいます」

「では皆さん、乾杯!」

「乾杯!」

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