盗まれたプラネタリウム

夕日ゆうや

地球寒冷化

 ここは天然のプラネタリウムだ。

 毎年この時期になると、この場所に来て、この場所から夜空を眺める。

「あれがシリウスで――」

 隣にいるユリと一緒に星空を見上げる。

「俺、いつか宇宙で働きたいなー」

「そうなんだ。わたしも一緒に行きたい」

「ユリ……」

 俺はその柔らかな肩を抱き寄せて、熱を確かめる。


 ふと、夜空に浮かぶ星々が少しずつ移動していく。

 なんでも地球温暖化対策として、星々を動かし引力の均衡を崩し、地球を太陽から遠ざける。

 そんな馬鹿げたことをすると言っている。


 だから、夜空に浮かぶ星々は少しずつ移動している。

「ねぇ、ひろくん」

「なんだ?」

「これで地球温暖化から救われるんだよね?」

「ああ。そうだ」


 天然のプラネタリウムは盗まれてしまった。

 もうあの星々は見ることができない。



 数日後。

 星々を移動させたことにより引力の均衡が崩れ、地球は太陽系からはずれ、遠くへと移動することになった。

 だが、当初の予定よりも離れすぎ、太陽光が届かなくなった。

 寒冷化により人類の99%が死に至る。

 ガソリンや灯油といった石油による暖房をガンガンにつけ、冷風に耐え忍ぶ人類とその家畜たち。

 人はその行為に驚愕し、今もなお寒冷化は続いている。


 星々は消すべきじゃなかった。

 あのプラネタリウムにもちゃんと意味があったのだ。


 人はまた罪を重ねた。

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盗まれたプラネタリウム 夕日ゆうや @PT03wing

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