第6話 記憶の復活と感情の高まり
リボンを解くと、ユカリとユリンの体が元に戻る感覚が広がっていく。ユカリは、自分の心に新たな感覚が芽生えているのを感じると同時に、封印されていた記憶が次々と蘇ってきた。泉での出来事が鮮明に甦り、ユリンの存在が深く関わっていたことを思い出した。
「ユカリ、君はもうすぐ思い出すんだよね…全部。」ユリンがふと足を止めて、静かに口を開いた。
「ええ、分かってる。でも、怖い。」ユカリは歩を緩め、ミサキの顔を見つめた。「あの封印が解除されたら、過去の自分がどう感じていたのか、全てが蘇る。それは、本当に私にとって必要なことなのかな。」
ユリンは深い呼吸をして、ゆっくりとユカリに向き直った。「必要かどうかは、君自身が決めることだ。でも、思い出すことで、きっと新しい一歩を踏み出せる。…私が助けた、あの日の君をね。」
その言葉に、ゆかりは息を呑んだ。記憶の断片がゆっくりと形を成し始める感覚が彼女を包み込む。泉に落ちたあの日のこと…水の中で感じた冷たさと、差し伸べられた手の温かさ。そして、その手の持ち主がユリンであったことを――今、はっきりと思い出したのだ。
「ユリン…あの時、私を助けてくれたのはあなただったんだね。」ユカリは涙を流しながら呟いた。「泉で…私が死んだと思ったけれど、不老不死の泉で…あなたが…でも、どうして何も言わなかったの?」
ユリンは少し照れくさそうに笑った。「気づいてほしかったんだ。君が本当に望むことを、君自身の心で確認してほしくて。」
ユカリは驚きと感動の表情を浮かべながら、ユリンの言葉に耳を傾けた。「私はただあなたが大切だから、あなたを守りたかった。」
ユカリはユリンが妖精であり、お花の妖精であることを理解することで、自分が過去に何を経験していたのかがわかった。ユリンは単なる同級生ではなく、彼女にとって特別な存在であった。
「でも…どうして私を選んで助けたの?」ユカリはその疑問を口にした。
「それは…あなたが私の伴侶になる運命だったから。」ユリンは優しく答えた。「私の役目は、必要な時に手を差し伸べること。あなたの人生に深く関わり、支えることで、あなたが持つ魔法力を引き出すことが私の使命だったの。」
ユカリの感情は高まり、過去の出来事が繋がることで、二人の絆が強くなる。ユリンが単なる同級生ではなく、彼女の人生において重要な役割を果たしていたことを理解することで、ユカリは深い感謝の気持ちを抱いた。
「ユリン、本当にありがとう。」ユカリは涙ながらに言った。「あなたが私を助けてくれたから、私は…生きてる。」
「私も、あなたと一緒にいられてよかった。」ユリンは微笑みながら言った。
ユカリは胸の奥に小さな痛みを感じた。それは後悔と感謝が入り混じった感情であり、同時にユリンに対する深い愛情が根付いた瞬間でもあった。
「思い出したよ、全部…ありがとう、ユリン。本当にありがとう。」涙が彼女の頬を流れ落ちる。
ユリンはその涙をそっと指で拭い、「もういいんだよ、ユカリ。君は十分強くなった。これからは、君自身が選んだ道を進めばいい。私はいつでもそばにいるから。」
二人はしばらく、言葉も交わさずに立ち尽くしていた。リボンの結び目は、彼女たちの絆を強く象徴していた。時間が静かに流れ、彼女たちの間に漂う空気は、新たな決意と深い信頼に満ちていた。
「これで、封印は完全に解けたのかな?」ユカリが少し不安げに問いかけると、ユリンは笑顔で頷いた。
「うん、封印はもうない。君が自分の力で解いたんだよ。そして、その力が君の未来を明るく照らしてくれる。」
ユカリは頷き、未来に向けた新たな一歩を踏み出す決意を固めた。そして、ユリンとの永遠の約束――それが、彼女にとっての何よりも大きな力となった。
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