レナ
柳 一葉
レナ
小学校に入って5回目の夏休み明け
皆が宿題のプリントやドリル、図工での画用紙に描かれた色とりどりの水彩画をランドセルから取り出して、夏休みも時たまに遊んでいたから久しぶりとは言わないが、
「今日転校生が来るみたいだってさ!」
溌剌と話した
「あ、やっぱり来るんだ〜」
成美はあまり興味を示してないみたいだった。
「お、晶子お前髪切ったん?」
そう発した声の居場所を探る。
「彰君気づいたみたいだね〜良かったね〜」
と先程とは違った声色で私に言ってくれた。
朝のチャイムが鳴り、担任の新田先生が来る。本当に新しい子来るのかな〜と私はうずうずしてる。
新田先生が挨拶と共に
「このクラス、5年2組に新しく一緒に学ぶ子が増えました。さあ、自己紹介を」
と先生が一言の後に続いて、柔らかい声で
「
最後にぺこりと頭を下げ挨拶を述べた。
私は、清水レナを見た後、すごく綺麗な子だと思った。それと同時に彰の方を見た。彼は雷に打たれたかの様な顔をしていた。
すぐさま彼女、レナは私の前の席に案内されて座り再度挨拶をした。
「よろしくね」
昼休みになると、レナの机の周りには皆んなが興味津々と集い
「どっから来たの?」「教科書違う!面白い!」等と声が教室に鳴り響いてた。
下校時間になると、レナから話しかけてきた。
「晶子ちゃん。よかったら一緒に、途中までで良いから帰らない?」
私は明るい顔で
「良いよ」と返した。本当は未だに彰の事があり複雑だ。
「引っ越してすぐだけど、最近隣町?で小学生を狙った事件があって、それでお母さんが心配しててさ。初めて会ったばっかりなのにごめんね」
「別に良いよ、気にしないで〜」私の母はその事件について心配もしないし、何なら私よりレナの方が、この町について詳しいのではと思った。
一緒に帰宅したが特に会話は続かなかった。「暑いね〜」等しか言葉に出来ない位、私もレナに見惚れてる。本当にお人形さんみたくて、傍で見ると尚更肌の白さ、キメ細やかさ、まつ毛が自然とカールしてる。膝丈のワンピースに白いタイツも相まって余計にお人形さんみたいな女の子。
数日後事件が起きた。
あれからずっとレナとは帰宅している。今日も一緒に帰ろうとしたが、レナが居ない。彼女は本が好きだったから、図書館に居るかと探すが、窓に浮かぶ夕焼け。もうすっかりと日は傾いてた。結局その日はレナとは一緒に帰れず仕舞だった。明くる日レナは事件にあい入院した。と全校集会で校長先生がマイク越しに発した言葉が体育館中へと膨張した。学校の廊下ですれ違う度に、あの事件に巻き込まれた子と仲良かった子だと噂立っていた。
「やっぱりあの日まだ探して一緒に帰ってれば」私は涙ぐむ。それを彰が気づいて
「お前のせいじゃないから、ほらいつもみたく笑ってくれ。何なら今日サッカー練無いから一緒に帰るか?」
彰が諭してくれた。私は鼻声になりながら「うん、ありがとう」と掠れた声が出た。
彰と一緒に帰るのは何時ぶりだろう、彼がサッカーチームに入って結構経つから、本当に久しぶりだ。他愛のない話が次から次へと続く、楽しい。
「ところで晶子。お前昨日何してた?」
「え」
「だから、お前放課後何してたかって」
「私は、、、私はレナと帰る予定だったけど、何処にも居なくてずっと探してたよ。そしたら今日事件にあったって聞───」
私は夏の暑さなのか、ただ単に思い出して脂汗をかいていたの分からない。
「お前ずっとその光景見てただろ」
「彰何言ってる、、、」
そこには私の知らない、見た事のない顔
蝉の声が耳が痛いくらいミンミンと五月蝿く頭がふらつく
「俺、昨日サッカー練の休憩の時に、お前見かけて話そうとしたら」
ミンミンミンミンミンミン うるさいうるさい
体育館入口でレナが倒れていた
─────────────────────
「私は知りたかった」
レナが憎くて、憎くて仕方なかった。だって彰のあんな顔見るのなんて初めてだったから。どんどん彰の初めてを奪っていくレナが、、、
ある日、女の子の間で生理の話になった。私は、初潮は先月来てて小声で
「もう大人じゃん!晶子」って言われたが、正直あのキツさ、初潮祝いの赤飯は家族全員いや、友達も含めて気色悪かった。レナはと言うと、まだ迎えてないみたいだった。そこも私は憎んだ。単純に羨ましかっただけかもしれない。
レナはいつもワンピースを着ている。私も成美も最近は暑いから、キャラクターのプリントされた半袖にショートパンツやミニスカートを履いているが、それでもずっとワンピースを着ている、初潮も迎えてないレナが私は本当にお人形さん、少女の様な可憐さ、私に持ってない何もかもが羨ましかった。
あの日は、そう、あの日は何気ない会話だった。そう私は、放課後体育館にレナを呼び出した。
「晶子ちゃん話って何?」
無垢な少女が問う
「レナって好きな子いる?」
私は怖かったが出来心で聞いた、でも鈍い私でも確信はあった。
「ん?ん〜」
レナは私を貶めたかったのか、
「多分晶子ちゃんが思ってる子だよ〜あの子ってばすごく単純で、目配せしてるのがとても可愛いなって思ってる」
私は、私は自分でも思ってるより醜き顔でお人形さんである彼女、レナの足を文具バサミで切りつけた。
だが、白いタイツは全く赤く染まらなかった。
─────────────────────
「レナ!」
急いで来た割には化粧品の匂いが部屋に充満した
「ママ」
昨日から入院してる私の病室へと、ママが籠から溢れ出そうな程のフルーツを持ってきてくれた。ママに何食べたい?どれがいいかしら?と聞かれたのでリンゴを選んだ。
「良かったわ。切られた箇所が足で」
「うん!不幸中の幸い?って事かな〜」
私は和ませるかの様に冗談っぽく返した
「身体不十分、五体満足で産む事が出来なくてごめんなさいね」
「ん〜んママいいの。その義足のお陰で私は数日間の入院治療でまた戻れるから」
「今あの子何してるかな」ね晶子ちゃん。
レナ 柳 一葉 @YanagiKazuha
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