骨喰み〜猟奇伝説佐伯〜

宮詮且(みやあきかつ)

あらすじ

以下、横溝正史ホラーミステリ大賞のための月末までのあらすじです。

本編は2話目からお読みください。


 佐伯は、僻地特別機動隊、通称「僻地隊」に所属する、出世と縁のない田舎のおまわりさんであった。穏やかな田舎の生活を愛し、同棲する恋人と信頼できる同僚たちと幸せな日々を過ごしている。

 その日、毎年恒例の地元の男根祭り会場に警邏に向かった。その祭りは、さつまいもを男根に見立てて削り出したものをイモマラ様という神体とし、厄男が腰につけて踊り、五穀豊穣や子宝祈願などをする祭りであった。 佐伯は、祭り会場に見慣れない見せもの小屋を発見する。同僚のロボット警官貞沼と小屋を気に掛けつつも、始まった祭りの誘導を優先させる。

 ほとばしる汗と液体の生々しいにおい。燃え盛る篝火の熱気の中、無事に終了した祭りに佐伯は安堵する。翌日にはイモマラ様は刻まれ、芋汁として振る舞われる。すなわち神を食う祭りであった。

 翌日、佐伯は同棲する恋人、真弥から、見せもの小屋で起きた事件の噂を聞き、貞沼と共に聴取に向かう。そこは、生体アンドロイドを使用した性的な見せもの小屋であった。家主である羽佐田重臓は、昨夜の事件はアンドロイド同士の事故であると主張する。

 和式便器を模したチョウズ、カエルを思わせる容貌のオベンチョ。二体の様子から、アンドロイドではなく生身の人間であることを確信した佐伯は、荒事担当の同僚たちを応援に呼ぶ。

 駆けつけた、神鳥、刈賀らと共に、さらに小屋の奥を調べると、貞沼が昨夜の祭り会場で見かけた金髪の男が全身を変形させられて閉じ込められていることに気づく。

 すぐに佐伯の同僚、刈賀と神鳥によって、羽佐田への苛烈な尋問が開始された。また、オベンチョたちの保護を要請した佐伯と貞沼は一旦小屋から出、休憩を取るも、突然の発砲音が小屋の中から響く。

 駆けつけた先で見たものは、顔面を噛みちぎられた保護員と、刈賀の発砲を受けても動き続ける金髪男の姿であった。

 金髪男を確保し、「坂口家の比呂人と夢子」なる人物について羽佐田の証言を得た佐伯と貞沼は、地元の名士である坂口家を尋ねるが、邸宅の門は固く閉ざされていた。半ば諦め気味に周辺を探索する佐伯と貞沼に声をかけたのは、坂口家の次男、篤人であった。篤人によって、佐伯と貞沼は屋敷へ迎え入れられる。

 篤人によって呼び出された比呂人は、ひどく不機嫌な様子であったが、夢子に会わせると言い、佐伯と貞沼を屋敷の離れへと連れて行った。

 佐伯と貞沼は、そこで比呂人からの虐待と凌辱を受け続ける夢子と出会う。夢子は比呂人の命令により、佐伯と貞沼に襲いかかる。彼女は不死の持ち主であった。

 貞沼が破壊され、佐伯もまた瀕死の重傷を負い、意識を失う。

 佐伯が目覚めると、夏朗と名乗る青年が、「自分の血を輸血し、佐伯を半不死人にした。あとは夏朗自身を殺せば完全になる。不死になった身で夢子を殺してくれ」と佐伯に依頼する。佐伯は断るが、繰り返し夏朗に殺される内に、夏朗の頼みを聞くことにする。

 篤人と連絡を取り付けた佐伯は、翌日再び坂口邸に向かうことを約束する。

 帰宅した佐伯は、真弥に自分に起きたことを話す。真弥は、赤馬町付近の風習について佐伯に話して聞かせた。それは遺骨を食べ、遺志を継ぐように死を悼む独特の風習であった。

 翌日、佐伯が坂口邸を訪れると、篤人は佐伯に夏朗の骨を噛むように促す。夏朗の骨を噛んだ佐伯は、夢子と死闘を繰り広げる。

 夏朗の血液、骨、また夢子の血を取り込むうちに、佐伯は夏朗と夢子の関係性を理解していく。夏朗の被虐性を満たすには、夢子が必要であり、また夢子の嗜虐性を満たせるのも夏朗だけであった。

 比呂人は夏朗の生活を確保するために、比呂人に弄ばれることに甘んじていたが、比呂人は自分を受け入れてくれたものと思い込んでいた。比呂人は死んだ夢子から生まれた子を育て、また新しい母を得られる喜びに打ち震えていた。

 佐伯は、死んだ夢子の頬にとまる黒蠅を見ながら、暗澹たる気持ちを噛み締めるばかりであった。

 後日、比呂人の父、史人が比呂人を殺害するという事件が起きる。遺族の様子を見るという用向きで、佐伯と刈賀が篤人の自宅を訪問する。篤人の部屋には、あの時生まれたこどもが夢子と名付けられ眠っていた。母、夢子と夏朗をどこに埋葬したのかと尋ねるが、教える気のない篤人を前に、佐伯と刈賀は引き下がる。

 家路につく佐伯の頭上には、アルデバランが輝き、佐伯は自身の内に夏朗の被虐性に似たものが芽生えるのを感じていた。

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