生霊のナンパ

天川裕司

生霊のナンパ

タイトル:生霊のナンパ


家に帰る夜道を歩いていたら、

男「おや、キミ可愛いね〜♪ね、よかったらさぁ、これからちょっとご飯でも行かない?」

と変な男が声をかけてきた。


無視して歩いてると、

男「ねぇ、ねぇったらさぁ、ちょっとだけイイじゃない?全部おごるし、あ、なんだったらさぁ、好きなもの買ってあげるよ?」

と本当にしつこく寄ってきた。


「……あの、やめてください。あんまりしつこいと…」

勇気を振り絞って言ったのだが

男はずっと同じ調子で言い寄ってくる。その時、

別の男「おい!やめてやれよ、嫌がってるだろ?」

とめちゃくちゃイケメンの

男の人が割って入ってくれた。


男「…なんだよお前、カッコつけてんじゃねーよ」

別の男「ああ?来るなら来いよ、やってやんぜ」

男「…覚えてろよお前」

そう言ってナンパしてきた男は立ち去った。


別の男「大丈夫?」

「あ、ありがとうございます。本当に助かりました」

別の男「なんだったら送ってあげようか?もう暗いし」

「あ、大丈夫です。すぐそこですから。でも本当にありがとうございます」

別の男「そっか。じゃあ気をつけて」

「あ、はい…!」


とてもカッコよかった。


それから数週間後。

私にやっと彼氏ができた。

専門学校で同じクラスの人。


でもそのとき同時に、あのとき助けてくれた

イケメンの彼も現れたのだ。

街中で偶然ばったり会う形で。


あの時のお礼をしたいと思い、

喫茶店で軽く談笑し、私が彼におごった。


「本当にあの時はありがとうございました。おかげであれからあの人、現れないようになってくれて」

別の男「そうなんだ。ほんとによかったよ」


とても爽やかな彼。

でもその時、ちょっと私の側にトラブルがあった。

既に彼氏が居ながら、今目の前に居るこの彼の事も

少し良いと思ってしまったんだ。


「(何やってんのよ私。もう私には彼が居るんだし、浮気なんて絶対ダメよ…!)」

当たり前の事を当たり前に心の中で思い、

少し気持ちを切り替えようとトイレに行った。


(トイレ)


「はぁ。私って浮気性なのかなぁ…」

悩みながらトイレに座っていた時、

ドアがこんこんとノックされた。


「え?あ、あの、入ってます」

と言おうとしたが遮るように、

「ねぇ、今付き合ってる彼氏居るの?顔にそう書いてあったよ」


「(…えぇ?!)」

心底、驚いた。

なんとドア向こうに立っているのは

私を助けてくれたあの彼だ。


その彼の口調がだんだん荒くなってゆき、

ノックもこんこんからドンドンに変わり、

「俺と付き合う気になれよ」

そう言うような雰囲気に変わってきたのだ。


「ちょ、ちょっと何してるのこの人…!」

本当に恐怖しながらドア向こうの気配を探ると、

誰もその彼を止めようとしてくれてない?


ドア向こうがシーンとしており、

人の気配がしなかったのだ。

「な、なにこれ…」

と思いながらパニくってるとさらに恐怖が…!


「きゃあ!!!」

思わず悲鳴をあげた。

彼がドアをすり抜けてこちらへ入ってきたのだ。


別の男「俺と付き合う気にならなかったのかよ。なに学校に彼氏作ってんだ?助けた意味ねぇじゃねぇか」


「あ…あわ…あわわ…」


あまりの恐怖に何も言えなくなった私に…


別の男「助けただろあの時!あ、もしかして忘れちゃった?」


別の男「なら思い出させてやろうか?ほら、こんな顔した奴にナンパされてたろ?あの暗い道で」

と言いながら彼が自分の顔を左手で、

上から下へなでるように下ろすと…


「きゃあ!!」


あのとき私をナンパしてきた、あの男の顔になった。


別の男「コイツにナンパされてたろ?この顔によ?思い出したか?そんで…」

今度は下から上に同じく左手で

顔をなでるように上げると、

また元のイケメンのこの男の顔になったのだ。


別の男「この顔に助けられたろ?どうだ、思い出したろ?助けてやったんだから俺と付き合えよ」


別の男「あんな経験、他の奴とじゃ出来ない事だろ?それだけ貴重な経験を俺たちしたんだよ?つまり他の男との間には無い絆ってもんだ」


別の男「だからその絆を大事にしてよ、他の何の絆も無い男達との関係を求めるなんてやめろよ」


「な、なんなの…これ…」


別の男「ねぇ、これからも助けてやるからさぁ…」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=Um69WExyTqw

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生霊のナンパ 天川裕司 @tenkawayuji

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