腹ペコギャルのお見舞いへ

短めですが、本日2話目です

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 雫の噂に関する詳しい状況をギャル三人が教えてくれた。

 どうやら昼休みになるまでの間に情報を集めていたらしい。


 案の定というべきか、噂の出処はやはりサッカー部だった。


 どうやら誰かが冗談で言った事を八町が強く否定しなかったことで、噂が広まりだしたみたいだ。

 なので、今回の一件は発端こそ八町は関与していないが、事態が大きくなったのは八町に原因にあるといえよう。


 それと噂が拡大した要因はもう一つある。


「……なるほどな。俺がノイズになってしまってるのか」


 昨日の調理実習で親密そうにしていたのと今朝、雫を背負って保健室を運んだことが浮気の信憑性を高めてしまっていたようだ。


 呟けば、笹本が苦笑する。


「ノイズって……」


「ノイズだろ。俺がいることで話がややこしくなっているのは事実だろうし」


 八町と別れてから雫と関わりのあった男なんて俺しかいなかったからな。

 裏でこっそり繋がっていた——まあ、そこは事実だけど——と思われても仕方ない部分はある。


 とはいえ、だ。

 どういう事情であれ、俺がやるべきことは変わらない。

 八町には雫を傷つけた落とし前をきっちりとつけさせる。


 ——絶対に。


 思っていると、


「それで、どうする? もう証拠動画ばら撒いちゃう?」


 鈴木が俺に訊ねる。


「データ寄越してくれたら、梨乃亜たちで影響力ありそうなグループLINEいくつかに蘇芳が撮影した動画流しちゃうけど。多分、それで社会的? に一発ケーオーでしょ」


「……少し待ってくれないか。その前にやっておきたいことがある」


「やっときたいこと?」


「櫛名と話がしたい。本人が望んでないのに黙ってやるわけにはいかないだろ」


 いくら雫の為とはいえ、本人の意に沿わぬことをしようとしているんだ。

 もし実行に移すにしても、雫に一度ちゃんと話を通す必要があるはずだ。


「……ま、蘇芳の言うことにも一理あるか。分かった、そこら辺の最終的な判断は蘇芳に任せるよ」


「すまん、助かる」


 ただ問題があるとすれば、一向に連絡が取れないことか。

 雫とのメッセージを確認するも、未だ既読すらつかない。


(単純にスマホを見てないだけか、それとも——)


 考えていた時だ。

 三浦がスマホを取り出しながら言う。


「ねえ、蘇芳。今日の放課後あって空いてる?」


「今日は……空いてるな」


「良かった。今から言う住所をメモして」


「いいけど、何の住所?」


「放課後、行って欲しいところがある。大丈夫、そんな遠くないから」






 繁華街から一駅乗り換えた先にある高層マンション。

 そこが三浦が指定した住所だった。


「ここが……か」


 本当にそんなに遠くなかったな。

 かなり駅近だったし。


 思いつつ、オートロック前のインターホンで教えてもらった部屋番号を入力し、呼び出してみる。


『はーい』


 スピーカーから聞こえてくるのは、少しやつれながらも聞き覚えのある声。

 良かった、間違ってなかったみたいだ。


「雫——」


 声を発した瞬間、


『ええっ、すおーくん!? ど、どうして……!?』


「……三浦から聞いてなかったか? 放課後そっち行くって」


『き、聞いてない! 聞いてないよっ! 来るのは沙羽たちだって——!』


 ああ、なるほどな。

 俺のことは伏せておいたってわけか。


「まあ、なんでもいいけど入れてくれないか? 三浦から雫に渡せって持たされた物もあるし」


『……う、うん。ちょっと待ってね』


 一瞬の躊躇いが垣間見えた。

 やっぱり俺と会うのは抵抗があるようだ。


 ——多分、LINE無視してるからだろうな。


 三浦からのメッセージは把握している辺り、それで間違いないだろう。

 俺だって逆の立場だったら、似たような反応になると思う。


 だとしても、ここで引くわけにはいかない。

 その為に俺はにまでやって来たのだから。


 さっきから緊張で落ち着かない鼓動を落ち着かせつつ、俺は開かれた自動ドアを潜った。

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