残り物にはなんとやら
短めですが本日2話目です
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ハンバーグ&目玉焼き&焼き茄子&ほうれん草マシマシ乗せチキンカレー。
ギャル達が食い切れなかったトッピングを全て貰い受けた結果、それなりに豪勢な一皿が出来上がった。
「悪いね、蘇芳。全部食べてもらうことになって」
「問題ない。これくらいなら余裕で食えるから」
申し訳なさそうに言う三浦にそう返しつつ、どんどん食べ進める。
実際、前に食ったデカ盛りカレーと比べれば、この程度どうということはない。
そもそも作っている時点でこうなることは、なんとなく予想がついていた。
全員、身なりに気を遣っているだけあって四人ともとても華奢で、雫を除けば胃のキャパもその体躯に見合うものだった。
にも関わらずトッピングはたくさん用意したものだから、こうなるのは当然の結果ではあった。
本来なら俺と雫で分け合って食べるところなのだが、雫が本当は大食いであることはこのグループ外の人間にはまだ打ち明けていないはず。
そうなると消去法で残飯処理係は俺だけとなり、残すのも勿体ないので全部引き受ける形となっていた。
雫の少しだけ物欲しそうな眼差しを感じつつ、黙々と食べていれば、
「しかしまあ、ほんとによく食べるね〜」
正面で眺めていた鈴木が訊ねてくる。
「そういえば、蘇芳ってケンタンヤ? なんだっけか」
「健啖家な。……まあ、人並み以上には食えるとは思ってる」
「またまたー、涼しい顔で食べて何を仰ってんですか旦那〜。旦那以上に食べれる人間なんてそうはいないでしょー」
軽い調子で笑って言ったのは笹本だった。
何そのキャラというかよく分からない子分ムーブ。
訝しみつつも、俺は雫に視線を走らせてから答える。
「身近な人間の中ではそうだな。一人を除けばだけど」
俺の言葉の意図をいち早く察したのは三浦だった。
「……雫、それガチ?」
三浦は、目を丸くして雫を見遣る。
それで笹本と鈴木も理解し、目を大きく見開いた。
「マ!?」
「うわ、マジか〜」
「ちょっ、夏希も梨乃亜もドン引きすんなし! てか、すおーくんも何さらっとバラしちゃってんのさ!」
「あ、すまん」
女性の食事事情を簡単に口にするのは、些かデリカシーに欠けることだというのは俺でもわかる。
うん、流石に今のは軽率な発言だったな。
一度カレーを食べる手を止める。
つんと澄ました顔の雫に体を向け、頭を下げる。
「悪かった」
「あ、えっと、そこまでして謝らなくてもいいんだけど……ま、まあ、今度から気をつけてよね」
「ああ、肝に銘じる」
「うむ。なら、よし」
小さく頷くと、雫はにっと笑ってみせた。
——良かった、どうにか許しを得たか。
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、ふと視線を感じた。
向こう側にいるギャル三人が何故かにやにやと目を細めていた。
「……何?」
「ううん、なんにも。ウチらのことは気にせずどうぞ」
「いや、気にすんなと言われてもな……普通に食いづらいんだけど」
女子三人から同時にじーっと見られてそれは無理あるだろ。
居心地の悪さを感じていると、雫が三人にしっしと手の甲を払って言う。
「ちょっと、すおーくんの邪魔なってるから沙羽たちは食器洗ってて!」
「「「えー」」」
「三人でぴったし声揃えんなし。トッピング作りも含めて調理はすおーくんに全部任せきりだったんだからワガママ言わない!」
雫のお叱りが効いたか、はたまた調理中のことを負い目に感じていたのか。
三人は互いに顔を見合わせてから肩を竦めると、「仕方ないなー」と席を立った。
それから使った皿やら調理器具やらを協力して洗い始めたのを確認してから、雫は小さくため息を吐いた。
「ごめんね、すおーくん。迷惑だったでしょ?」
「まあ、反応に困りはしたけど……別に気にしてねえよ」
「ホントに?」
「ああ、本当に。こんなところで嘘なんかつかねえって」
ふっと笑みを溢して答える。
すると、雫はなんだか渋い顔で顔を逸らした。
「……それなら、いいけど」
言って雫も椅子から立ち上がる。
「アタシも沙羽たちを手伝ってくる。三人だけに後片付けやらせるわけにはいかないし。すおーくんは、ゆっくり食べてていいからね」
「お、おう……」
そっぽを向いたまま言い残して流し台に移動する雫を見つめる。
彼女も他の三人に加わるのを横目に、俺は残ったカレーを胃に収めた。
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三話連続の報告でくどいようですが、コメントレビュー一件頂きました。
本当にありがとうございます!
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