38歳社長夫人、娘を捨てることにしました。

@mappii1124

第1話

わたしは

来月、娘を捨てる。






「ママー!あや、ママのことが大好き!」

「あやは、ママに似て本当に可愛い子ね」

「うん!あや、ママだぁーいすきだもん!」

「ふふふっ、それに違ってまいはね...」


私は、母からとてもとても愛されていた。

鬱陶しい程に。


母は、愛情とは何なのかまるで知らない。

幼い頃に両親を失い親戚宅に引き取られ、辛い日々を過ごしたらしい。


そんな母から、私は歪んだ愛情を一身に受け

育った。


母は愛に飢えているのだ。欲している。

満たしてくれる何かを、誰かを。

だけど、心にあまりに大きすぎる穴が空いてしまった者に心底寄り添って埋めようとしてくれる何かなんて到底存在するはずはなく、母の上を通り過ぎては、また大きく深いものに変えていったのだった。


私は、ただそれを見ているしか他に術はなく、より一層大きく膨らんでいく母の心の穴を埋める道具の一つとして共に同じ建物で過ごしていく日々をおくった。


死にたい。


産まれて初めて遺書を書いたのは、幼稚園年長になる5歳の時だった。きっかけは些細な事で、2歳上の姉のまいとの姉妹喧嘩だった。その隣で母は顔をしかめながら布団の奥へと潜って行った。母の仕事はホテトル嬢。今だに娘達に気付かれていないと思っているみたいだが全くもってお笑いだ。世の大人達は、残念ながら我が子の能力を見誤っている、意味が分かるまいと思いながら会話している内容は全てお見通しだ。


性行為、覚醒剤、風俗、ヤクザ。


世間がいうところの「普通」という生活を過ごせていたならば習得できるはずもない知識を私は4歳の時点で学んだ。

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