あの世でもぼっち

tokison

第1話 誰も見ないエンディングノート

40歳の自分への誕生日プレゼントは、エンディングノートにすると最初から決めていた。

独身女・非正規・友達0の陰キャ。持病多数・家族とは20年間疎遠。これ以上生きる意味は、私にはもう何処にも見出せない。



誰も居ない狭いワンルーム。此処が世界で唯一の、私だけの居場所なのだ。正確に言えば賃貸なので、私は借りているだけなのだが。

通販サイトで買ったエンディングノートを開き、さっそくペンを取る。記入日は私の誕生日、つまり今日である。せめてもの抵抗の如く、でっかくその部分を丸で囲む。

私は己の生まれた日に、死ぬ為の準備をすると決めたのだ。人生の半分を終えた感想は、「生まれて来て良かった事は何も無い」である。



エンディングノートは、たったの15分で前ページ描き終わった。はっきり言って、私には細々と書くことが無い。死んだら直葬のみ・葬式は絶対に要らない。どうせ参列者は誰も来ないとわかっているからだ。

遺体を焼いた残骸は、血縁者の墓以外なら何処に捨てても構わない。その辺のゴミ箱にでも、ぽいっと放り込んでおいてほしいのだ。

これらの全てをでかい字で書いた後、表紙に私は黒マジックで「葬式をするな・血縁者と同じ墓に入れるな」と書いておいた。此処だけは何としても強調しておきたい。こんな最悪の人生だったのに、血縁者と同じ墓に入れられたら私の人生は本当に地獄しかなくなる。



問題は此のエンディングノートを、一体何処に置けば良いのかという事である。うちには誰も来ないし、これが発見されるのは私が孤独死した時だろう。つまり警察にわかりやすい場所に保管しておかなければならない。

1日考えたが、結局めんどくさくなってその辺の棚の1番上に放り込んでおいた。一応ヤバい死ぬわと思う時が来た時、引っ張ったらすぐに取れるところにしてある。

エンディングノートを書いた後、私の40歳の誕生日は終了していった。私の寿命が80歳だとすると、あと40年も此の地獄を生きなければならない。何度もため息を付きながら、明日の朝隕石が落ちますようにとお祈りして布団の中に潜り込んだ。

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