第8話 勇者と魔石と魔物のランク
「やぁ! 久しぶりだね!」
その後数日かけて、我らが勇者ユートとの合流場所に到着した。
「ういっす! 待たせたな!」
「……ども」
4年も一緒に旅してまだ人見知りしてる野郎、 他に、いますかっていねーか、はは。
……ははっ。
ユートとは中学からの仲なので、前の世界含めたら6年くらいの付き合いだ。
性格は全く異なるが、何となく馬が合ってよくツルんでいた。
まぁ多分、恐らく、間違いなく、俺はこいつの異世界転移に巻き込まれたんですけどね!
何だよ魔物使いって! 俺にも勇者くれよ!
「さ、僕からのプレゼントだよ!」
「おぉー! ありがたい!」
ユートが袋から取り出したのは、数々の魔石。
俺とノノが魔物集めに出ている間、ユートはこれらを集めて来てくれたのだ。
魔石の用途は、主に魔法陣や魔道具の電池のように扱われ、日用品から大都市の結界等に使われている。
魔石は魔物の体内に生成され、その強さに応じて大きさ、つまり等級が異なる。
E、D、C、B,A、Sの順で魔石の価値は上昇し、Aともなると数年は遊んで暮らせる程だ。
ランクは魔物のそれにもほぼ同一で、冒険者ギルドが定めたランクでもある。
Eは子どもでも勝てる強さ、Aともなると軍隊レベル。Sは実質測定不能と言う事らしい。
冒険者ギルドと言うのは、こういった魔物を倒してその素材を卸すことで生業としている人々の仲介業者みたいなものだ。
他にも町民のちょっとした依頼を受けたり……職のライフライン的役割をはたしているとか何とか。
閑話休題。
ユートが魔石を集めている理由は単純な資金集めのためもある。
しかし、1番の理由は――。
「久しぶりだし、1つだけ使ってみてもいいか……?」
「もちろん! 少し等級が低くて申し訳ないけど……」
ユートの言葉を受け、早速魔石を砕く。
すると周囲に濃密な魔素、魔力の素となる物質が広がっていく。
「ふぅ……」
それらを体内に取り込むことで幾分か魔力が回復するってことなのだ!
もし俺が魔力切れをになってしまった場合……とんでもないことになるからな!
「どうだい?」
「あぁ、いい感じだ!」
体の中で消耗していた魔力が少し満たされた感覚。
久しぶりにやってみたが、問題はなさそうだ。
「ふふ、気を使わなくてもいいよ。正直、あんまりだろう?」
そう、正直効率は悪い。
決して低くはないランクBの魔石も、体感でスライム10匹くらいしか回復していない気がする。
小さな家が1軒買える程の魔石でスライム10匹分。
魔力の回復は寝て起きたら回復しているため、魔石のこういう使い方は本当に緊急用だ。
「それでも魔力に余裕があるのはありがたい。助かるよ」
普段の魔力はテイム用に、緊急時には魔石を使って。
魔力のやり繰りが楽になるぞ!
「ふふ、君は相変わらずいい奴だなぁ」
いやいや、そうでもなくない?
「……ごめんね」
そして唐突に、ユートに謝るノノさん。
何で?
「……いいんだ。君は君のやりたいことを優先してくれれば」
「……」
何だ何だ? 意味が分からん……。
この空気、どうすればいいんだ?
「……さ、戻ろうじゃないか! 僕たちのパークへ!」
「……ん」
「……うぃ」
気まずい空気を無理矢理振り払い、俺たちは出発した。
◇
「はぁっ!」
「グガッ!?」
ランクCの魔物、グリズリーをあっさり斬り伏せるユート様。
やっぱり強い!
ちなみに、先日捕まえたコンたちはみんなランクEだぞ!
「怪我はないかい?」
「やだ、イケメン……抱いて!」
しかも爽やか笑顔でこちらを気遣うところもポイント高い!
「はっはっは!」
笑ってごまかすところはマイナスだぞ。
やっぱさっきのは無しで!
「レイジも戦ってみたらどうだい? この辺のはちょうどいいと思うけど」
「あ~……」
確かに、ここ最近俺自身は戦っていなかったな。
今ならユートもいるし、魔石もあるし、ちょうどいいか。
「ほら、早速いい相手が来たよ!」
ユートの示す方向を見ると、2本足で移動する狼、ワータイガーが3匹こちらに向かって来ていた。
「アォーンッ!」
「ガァッ!」
敵までの距離、およそ50メートル。
これなら大丈夫だろう。
「よしっ! 『人魔一身』! 来いスララ!」
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