輝き症候群
高志保 しほ
輝き症候群
※本作品は完全フィクションです。
皆さんは「輝き症候群」という言葉をご存知でしょうか。
「輝き症候群」というのは、いじめの一種です。
一見、良い言葉とも捉えられる「輝く」という言葉が、なぜいじめになるのでしょうか。
それは、「輝く」の英語のスペルに由来します。
「輝く」と言う言葉は、英語で「シャイン」と読み、「shine」と書きます。
この時点でほとんどの人が気付いたと思いますが、「輝き(シャイン)」は「タヒね」と同じように書き、これがいじめとなっています。
これの一番厄介なところは、
被害者側は、「輝き」という言葉を誉める言葉だと認識しており、嬉しい気持ちになっていたと思います。
しかし、何らかの理由で「輝き」=「タヒね」と気付いてしまい、普通のいじめよりダメージが大きいとされています。
大人数の人にこれが言われていたら、なおさら心が崩れてしまい、大半の人はもう立ち直れなくなります。
なので、このいじめは陰湿だと言われています。
まだ実感が沸かない人もいると思うので、ここで例を一つ紹介しましょう。
「高み」
私の名前は
障害持ちとなると、学校とかも特別支援学級、症状が治らないなら特別支援学校となって、こっち側としても色々大変だし、大人になっても何らなの支援を受けなければならないかもしれない。
それに、私に「障害児持ちの母」というレッテルを周りから貼られたら、最悪っちゃありゃしない。もう、今すぐにうちの子を手放したかった。
かと言って、夫とも仲がいいし、離婚は無理だし、養子に出せるわけでもない。
だから、私は我慢するしかなかった。
子供が小学生になって、ある程度の言葉は分かるようになった。ただ、漢字だらけの言葉とか、難しい意味の言葉は分かってない。だから、特別支援学級に入ることになった。
やはり色々大変だった。友達付き合いとかも、心配だった。まだ低学年だから友達関係とかは大丈夫だろうけど、高学年になったら、もっと難しい話題とか、難しい言葉とかも出てくると思う。中学校になったら孤立してしまうんじゃないかと、今からでも心配だった。
そして、私は凄くストレスが溜まっていた。だから、鬱憤晴らしとして軽い気持ちで我が
「早く輝きなさい」
と。
まだ「輝き」と言う意味をよく知らなかったため、反応はあまり良くなかった。でも、言った瞬間に私は物凄い快感を覚えた。気づいてないんだし、前々から言っておけば良かったわ。ついでに、有紗は英語や国語は文字があるから苦手らしく、多分この先バレることはないと思うわ。
それからも私は「輝け」と我が
もはや我が
中学校になって、有紗は夢が出来たそうだ。しかも、その夢はアイドルらしい。
どうやら、テレビ番組でアイドルの取材しているところで、「輝き」という言葉を何度も使ってたから、興味が沸いてなりたくなったらしい。
遅い。遅すぎる。まるで冷やし中華を1月に始めたかのような遅さ。それに、アイドルとか言う単純じゃない夢だ。
前々からなりたくて、アイドルのことを理解して、本気で頑張っているならまだしも、ただ踊って歌うだけだと思っているらしい。
アイドルなんて、メンバー内の格差もあると思うし、迷惑なドルオタだっている。おまけに、メンバー内のいじめがあったりもする。
もはや呆れたを通り越して面白味がある。
だが、アイドルになる気があるなら、こちらとしても好都合だ。
専門学校とかにいって家に帰る頻度も減って、こちらとしても楽になれるだろうし、
何より普通の社会でコミュニケーションや仕事があまりできなくて、無職になって一日中家にいることなんて絶対ないと思うからだ。
だから、今まで以上に「輝け」と有紗に言い始めた。そしたら、早速変化が表れ始めた。
有紗は家にいる時はほぼダンスに費やして、キッズオーディションも受けるらしい。さらに、アイドル専門学校にも行きたいらしい。
最初は半信半疑だったけど、最終的に本気で頑張ってるんだなって理解した。
こんなの一石二鳥じゃないか。だから、私は更に「輝け」と言い始めた。
これから我が
あれから10年。有紗はオーディションに無事合格し、大御所に入ることが出来た。有紗の人気も伸びている。
そして今。私は有紗と共に私は武道館にいる。
有紗は夢だった武道館でライブをすることになって、今日がライブの日。
私が来るつもりはなかったが、是非来てほしいと後ろの席の方に座っている。どうやら、有紗は言いたいことがあるらしい。
「みなさーん!今日は、来てくれてありがとうございます!」
ダンスを披露した後に、キャーキャーと観客席から歓声が巻き起こる。
「私は、今日初めて夢である武道館でライブを行うことが出来ました!ありがとうございます!」
「そして、私は感謝したい人がいます。」
ざわざわと、観客席から声が聞こえてくる。
「その人は、私の実のお母さんです。」
視線が一気にこちらの方に向いてくる。
「実は、今日ここで初めて言うんですけど、私は言語障害を持っているんです。」
さっきよりもざわざわと声が聞こえてくる。
「でも、そんなとき、いつでも支えてくれたのが私のお母さんなんです。」
「私は、物心がついたときからお母さんに「輝きなさい」と言われてきました。」
「私がアイドルになりたい!と言った後は、もっと言ってきました。」
「私がアイドル活動の下積み時代で大変だった時も、オーディションに合格したときも、かかさず「輝け」と言ってきました。」
「自分の目標を達成した後も、「輝け」と言ってきました。だから、私は更なる目標を目指すことが出来て、ここにたどり着くことが出来ました。」
「そんなお母さんには、感謝しかありません!本当に、ありがとうございます!」
「他にも、地下アイドル時代から支えてくれた皆様、いつもライブに来てグッツを買ってくれた常連さん、私を支えてくれたスタッフの方々、そして、今ここにいる全てのファンの皆様、本当にありがとうございました!!!心より感謝します!!!」
「これからも、私はアイドルとして頑張って、最高に輝ける存在になりたいと思います!!!これからも、応援よろしくお願いします!!!」
一番の完成がスタジオ中に響きわたる。
「今日のライブはここまでです!また次回、起こし下さいませ!ではまた!!」
人が、どんどんいなくなっている。沢山のグッツを買う人、握手会で残る人、色んな人が、この会場に集まっていた。
そして、
「にしても、本当に凄いわねえ。あんなに遅く始めたのに、こんないいことが起こるなんて。アイドルで得た収入で、一生生活できそうだし、最初は最悪だと思ってた我が
そして、最後にこうつぶやいた。
いかがでしたでしょうか。「輝き症候群」は、このように良いことにつながる場合もあります。しかし、これはあくまで一例で、もちろん悪い例もあります。
これで、本作は終了です。楽しめた人は、今後の小説も何卒宜しくお願います。
次は貴方の番かもしれませんよ。
輝き症候群 高志保 しほ @shihosasimi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
未定最新/@Hakuretto
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます