新米歩兵ちゃんは死にたくない

陽暗鬼

第1話

 1876年5月13日、私の母国「ゼルディア帝国」は隣国「アルダニア連合王国」に宣戦布告しました。

 もともと両国の中は最悪で、国境付近は安全確保のため一般人の立ち入りが禁止されるほどでした。


 戦前の両国の関係は日に日に悪化していて、いつ戦争に発展してもおかしくない、そんなときでした。連合王国とは反対側の隣国「レヴォーツィア連邦」から、軍事技術の共同開発の提案を受けたのです。

 これは連合王国と事を構えるにあたって願ってもない提案でした。帝国はこれを快諾して、連邦と兵器開発に着手しました。

 そして10年後、ついに開発を成功した帝国は、満を辞して連合王国に宣戦布告したのでした。


 開戦当初は連邦と開発した新兵器「銃」の活躍もあって、連戦連勝でした。

 まず国境付近の敵拠点を制圧していき、国境を200キロほど前進することに成功しました。この時の犠牲者は、帝国側が3000人に対して連合王国側は500万人と帝国の圧勝でした。


 しかし……。


 連合王国でも新兵器の開発が完了してしまったのです。

 「超長距離爆裂魔法(通称イラプション)」と呼ばれたそれは、それまで帝国軍に押されていた戦況を180度ひっくり返すのに十分な威力を秘めていました。

 

 そして1880年、連合王国軍は帝国軍に対して大規模攻勢を仕掛けてきました。

 その日を境に帝国は徐々に勢いを失ってしまいました。憎き連合王国の手によって多くの帝国軍人が殺されました。武器も食料もたくさん失いました。国民の生活はとても厳しいものになりました。私の父は殉職し、私の母は私を捨てました。


 私は、私の家族を壊し、私を孤児にしたを許しません。



 決断してからの私はとても早く、すぐに兵隊に志願しました。志願兵ならば徴収兵よりも良い扱いを受けられると聞いたことがあるからです。

 また、孤児となって生きていく術のない私にとっては、訓練期間でも衣食住が確保できる軍隊はまさにぴったりの場所だったのです。


 そう思っていたのですが……。



「オラ新米!!!初陣でくたばりたくなかったら、死ぬ気で走れ!」


 なんで


「は、はいっ!小隊長殿!」


 どうして


「うあぁぁぁっ!?熱い!痛い!」

「ぎゃぁぁ!!!」


 どうして……


「どうしてこうなった〜〜〜!!!!!」



 私は一つ、勘違いしていることがあったようです。確かに本来ならば研修を受けられたでしょう。しかし今は戦時、しかも帝国側は押されている状況です。そんなときに後方で悠長に新兵を教育する余裕なんか、今の帝国にはなかったのです。


 こうして私、タウラ・ノイエの戦いは始まったのです。



________________________

 今回、私陽暗鬼びあんきの記念すべき第一作目を読んでいただき、誠にありがとうございます。


 第2話の投稿日は未定となっておりますので、ぜひフォローをしておいてくださいね。

 一応第4話までは終わっているのですが、少し書き溜めておきたいのです。


 今後とも、私ともどもタウラちゃんをよろしくお願いいたします。

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