新米歩兵ちゃんが一人前になる話
みこ丸
第1話
1876年5月13日、私の母国「ゼルディア帝国」は隣国「アルダニア連合王国」に宣戦布告しました。
もともと両国の中は最悪で、国境付近は安全確保のため一般人の立ち入りが禁止されるほどでした。
戦前の両国の関係は日に日に悪化していて、いつ戦争に発展してもおかしくない状況でした。
そんなときでした。連合王国とは反対側の隣国「レヴォーツィア連邦」から新兵器の共同開発の提案を受けたのです。
これは連合王国と事を構えるにあたって願ってもない提案でした。帝国はこれを快諾して、連邦と兵器開発に着手しました。
そして翌年、新兵器の開発に成功した帝国は、満を辞して連合王国に宣戦布告したのでした。
開戦から一年は連邦と開発した新兵器「銃」の活躍もあって、連戦連勝でした。
まず国境付近の敵拠点を制圧していき、国境を200キロほど前進することに成功しました。この時の犠牲者は、連合王国側が500万人に対して帝国側はわずか3000人と帝国の圧勝でした。
しかし……。
連合王国でも新兵器の開発が進められていました。
「超長距離爆裂魔法(通称イラプション)」と呼ばれたそれは、それまで帝国軍に押されていた戦況をひっくり返すのに十分な威力を秘めていました。
そして1877年8月29日、連合王国軍は帝国軍に対して一度目の大規模攻勢を仕掛けてきました。
南北に約100キロも広がる戦線を、連合王国お得意の物量で押し込んできたのです。
奇襲だったこともあり帝国の対応は間に合わず、300キロの後退を強いられました。
その日を境に帝国は徐々に勢いを失ってしまいました。憎き連合王国の手によって多くの帝国軍人が殺されました。
武器も食料もたくさん失いました。国民の生活はとても厳しいものになりました。
私の父は殉職し、私の母は私を捨てました。
私は、私の家族を壊し、私を孤児にしたあのクソ共を許しません。
決断してからの私は、すぐに兵隊に志願しました。志願兵ならば徴収兵よりも良い扱いを受けられると聞いたことがあるからです。
また、孤児となってしまい生きていく術のない私にとっては、訓練期間でも衣食住が確保できる軍隊はまさにぴったりの場所だったのです。
そう思っていたのですが……。
「オラ新米!!!初陣でくたばりたくなかったら、死ぬ気で走れ!」
なんで
「は、はいっ!小隊長殿!」
どうして
「うあぁぁぁっ!?熱い!痛い!」
「ぎゃぁぁ!!!」
どうして……
「どうしてこうなった〜〜〜!!!!!」
私は一つ、勘違いしていることがあったようです。確かに本来ならば研修を受けられたでしょう。しかし今は戦時、しかも帝国側は押されている状況です。そんなときに後方で悠長に新兵を教育する余裕なんか、今の帝国にはなかったのです。
こうして私、タウラ・ノイエの戦いは始まったのです。
________________________
今回、私みこ丸の記念すべき第一作目を読んでいただき、誠にありがとうございます。
第9話以降の投稿日は未定となっておりますので、ぜひフォローをしておいてくださいね。
毎日せっせと書き続けておりますので、気長にお待ちください。
今後も、私ともどもタウラちゃんをよろしくお願いいたします。
〈補足〉
少し補足すると、このときゼルディア帝国軍が使っていた銃は種子島から日本に伝わってきた火縄銃と同じものでした。つまりほぼ最初期の銃です。
このあとタウラちゃんが所属する部隊では、より新しい仕組みの銃を試験的に運用しています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます