モノローグ(柳)

              ◯


 桜井の応答を受信し、自分は目を閉じて思う……

 (流石は桜井、あっという間にそこへ到達した、自分は「太陽(◯)」に到達するまでにどれだけこの場所に立ち続け、この川面を眺め続け、考え続けて来ただろうか。……もはや理解の速さがまるで違う、兎と亀……いや、現代的に言えば飛行機と二足歩行か。

 やっぱり桜井と自分とでは「力」そのものが……「理解力」が全く違うのだ。

 そして……結局は「主観」と「主観」か……。それが桜井の答えなのだろうか?それとも……)


 ……目を開けた。そして、桜井の方を見て言った。

 今度こそ、自分が本当に問う番だ。……その答えこそが自分の見出した暫定的な結論なんだ、桜井とは違う方法で、この世界を総理解するための……

 だから、目を閉じて聞いてくれ。


 ……目を、閉じる? どういう事?と、桜井。


 …………


 自分は桜井の、どうして目を閉じる必要があるのか、との問いには答えない。まあ桜井はそう言いつつも、少しの沈黙を経て(…………)目を閉じてくれたから、自分も話を続ける。


 桜井、質問だけど、今……桜井の目の前の川面には何が映っている?


 私? 目を閉じているから何も見える訳……いや、そういう意味じゃないって事かしら?目を閉じた状態で川面に何が映っているか言ってみろって事ね……と、桜井。やはり話が早い。


 (…………)

 ……桜井はずっと黙考している。桜井は、気付くだろうか。気付かずに終われば自分の勝ちなのか? 自分の「総理解」は、桜井の「総理解」に本当に勝ったことになるのか? 自分はそれでも別に構わない。どの道(この道)、桜井は自分の目の前から消えて(去って)しまうのだろうから……

 でも、もし気付いたとしたら………勝つのは自分なのか、桜井なのか、それとも……この先にまだ何かあるのか?


 (…………)


 ……柳。と、桜井が一言。そして……目を開けて厳かな口調で答え始めた。


 ……これが、柳の見出した「答え」なのね。世界を「総理解」するための……


 自分は、主導権を桜井に譲り、その「答え」を待ち受ける……

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