モノローグ(柳)

                ◯


一A 一限英語Ⅱ


 机の上に課題プリントを広げる。まずプリント右半分一面には、二人の人物が会話する写真が載せてあるのだが……

 そのA4の白い用紙がそのまま肌色のアメリカ?白人男性、そして印刷用の黒トナーがそのまま肌色のアフリカ?黒人男性、……決して白人だから黒人だからと誇張したのではなく、白人と黒人にとって白黒コピーの副作用(コントラスト比 100%)があまりにも強過ぎた為だ。カラーコピーのインク経費を考えたらモノクロなのは分かるが、微妙な色合いが完全に無視され、ただ単に白と黒、言い換えれば0と1……デジタル的な無機質さが際立って味気ない。人間を白と黒だけで割り切ってしまうみたいな……人物の表情はあっても無情な感じがする? そう、無表情ではなく、無情そのもの……少し怖い。白人黒人はともかく、アメリカ人アフリカ人というのは、自分の勝手な想像に過ぎないのだが、直感でそれと分かる?のだ。

 それから、プリント左半分に目をやる。全て英文である、内容は人物Aと人物Bの英会話である。各英文の頭にそれぞれA、B、とあるからだ。また同じ事の繰り返しになるが、AとBなんて写真の二人を区別する為とは言え、せめて名前くらい付けたらと思う。ロボットではなく、血の通った人間なのだから。

 さて、その課題内容であるが、プリントにはただ英会話文が載っている以外に、課題の指示もなければ問題文も見当たらないものだから正解も誤りもない。ならばやって来なかった事が正解だった?と思っている。多分、一人一人に和訳を当てるつもりなのだろう。だから予め家で一読しておきなさい、という訳だ。そう察して、大雑把に一読してみた。


 予想通り、教師は和訳を当てに来たのだが、その途中で、どうやら自分には当たらないと気付いた。出席簿のアイウエオ順で当てて来たからだ。自分は柳(ヤ行)だから男子のほぼ最後である。それで一安心して、和訳を会話文の下にメモしながら、英会話中の人物A(アメリカ白人男性)と人物B(アフリカ黒人男性)の本名が何なのかをずっと考えていた……

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