第26話 忘れないで
201:名無しのバネ男さん 6/19 ID:YPv35t8hd9
すげえー
202:名無しのバネ男さん 6/19 ID:GBUmtu3CYR
バネ男はガチだな
203:名無しのバネ男さん 6/19 ID:IHT05qz6M8
は?ふつーに泣いたが?
204:名無しのバネ男さん 6/19 ID:P1yzsgGhZh
まじなんなんあいつふざけんな姉ちゃんに泣き顔晒しちまったじゃねえか
205:名無しのバネ男さん 6/19 ID:SvBD54XkH0
鳥肌もんだったわ
206:名無しのバネ男さん 6/19 ID:DaMZcSrYKB
けど、なんだろう。いつものバネ男じゃなかった気が
207:名無しのバネ男さん 6/19 ID:Pptx0i0IrL
マジでそれな!!とくに二曲目がヤバすぎる!!
208:名無しのバネ男さん 6/19 ID:3NIKJ6TziB
様子もおかしかったよな。また逃げるんかと思ったわ
209:名無しのバネ男さん 6/19 ID:Kdq2pQbVZm
確かにwwwぜんぜんマイクのとこいかなかったしw
210:名無しのバネ男さん 6/19 ID:GHJ68ZQM7v
あれってなにパフォーマンスなの?
211:名無しのバネ男さん 6/19 ID:mi2DPQqagB
俺にはわかる。あれは途中までガチで逃げる気だったぞ
212:名無しのバネ男さん 6/19 ID:lMEcopWfcw
二曲目なんてやつ?
213:名無しのバネ男さん 6/19 ID:jCPS4YARs3
曲名はcry。♰だーくありす♰ってオカロPの曲。
214:名無しのバネ男さん 6/19 ID:BPxk8YHJVk
一昨年くらいの曲やな。知る人ぞ知る人気ロックバラード
215:名無しのバネ男さん 6/19 ID:SCKEwGtVwZ
ほへー、やるやん
216:名無しのバネ男さん 6/19 ID:YuSBgbeyja
つうかバネ男めっちゃ感情のってたけど、彼女いる感じ?
217:名無しのバネ男さん 6/19 ID:q8Zzcmi1B7
え、これって恋人の歌なん?誰かと死別したのはわかるけど
218:名無しのバネ男さん 6/19 ID:IdJYIXsKMM
大切な人としか描写されてないからねえ。
219:名無しのバネ男さん 6/19 ID:rwvaZHyzUF
けど、すごいよな。マジで歌に引き込まれたんだけど
220:名無しのバネ男さん 6/19 ID:QRviuK74nJ
あのフードの下はいつものマスクだったのだろうか…
221:名無しのバネ男さん 6/19 ID:kgfHaahfcF
だったら台無しじゃねーかwそんなん想像したらマジで笑うww
222:名無しのバネ男さん 6/19 ID:38zMMG4rj6
確かにwww
223:名無しのバネ男さん 6/19 ID:5syPPiA9xx
いやー刺さったわーマジでリアタイできて良かったわ今回
224:名無しのバネ男さん 6/19 ID:QhCK1vXiGW
ギターの子も良かったよな。あれ誰よ?
225:名無しのバネ男さん 6/19 ID:LPtblbW0if
そういやすげえ上手かった!バネ男除外したらダントツで凄いんじゃね?
226:名無しのバネ男さん 6/19 ID:zfBeX3but2
いやいやrush blueおるやんけ
227:名無しのバネ男さん 6/19 ID:q2wdMhi3J3
ラブルのギターは上手くはないだろーそもそもソータやる気ねえし
228:名無しのバネ男さん 6/19 ID:hX2f16K8H0
楽器隊はトントンくらいじゃね?バネ男のとこのギターがヤバかったのってcryだけだったし
229:名無しのバネ男さん 6/19 ID:pM9jrsKE29
なんかムラがある感じだよなー。
230:名無しのバネ男さん 6/19 ID:UmKUV3JgPa
ていうかあの子、秋乃深宙だってご存じ?
231:名無しのバネ男さん 6/19 ID:dOBUTA75jd
誰?
232:名無しのバネ男さん 6/19 ID:r64I0oPC9O
深宙ちゃん!!?なんか似てると思った!!!マジでか
233:名無しのバネ男さん 6/19 ID:lXmbfXiiRX
だkらだれやねん
234:名無しのバネ男さん 6/19 ID:TcbJjFrpWS
ギターの弾けるモデルだよ!美しすぎるギタリストとかって売り出されてる高校生!!
re:seasonってガールズバンドのギターしてるんだけど、一人だけ異様に上手いって噂になってたやつ!!めっちゃ人気のモデルさん!!
235:名無しのバネ男さん 6/19 ID:zF7MIsFxyq
ファンかよw
236:名無しのバネ男さん 6/19 ID:O4Mw33rT98
まああれだけ可愛けりゃそら人気だわな。ま、興味ないけど…えーと、秋乃秋乃っと
237:名無しのバネ男さん 6/19 ID:dSiX8YXqiR
チェックしだしたw
238:名無しのバネ男さん 6/19 ID:q565ufkyAu
つうかラブルやばwwすべってんだけどww
239:名無しのバネ男さん 6/19 ID:k84pYmo13B
なんかテンションおかしいwソータどーしたよwww
240:名無しのバネ男さん 6/19 ID:xJAQkVxlod
このバンド初めてみたけどそんな上手くなくない?ライブダメな感じ?
241:名無しのバネ男さん 6/19 ID:SsCccrapNP
いや、むしろライブすげえって有名なんだが。調子悪いみたいだな。
242:名無しのバネ男さん 6/19 ID:ugcrZVHygZ
バネ男の時と盛り上がりぜんぜんちゃうやんけw
243:名無しのバネ男さん 6/19 ID:gD51DuQWss
バネ男回で疲れちゃったのかも
244:名無しのバネ男さん 6/19 ID:o98NUUlAhY
ちょwwソータだけテンションがwww楽器隊との温度差ヤバすぎwww
245:名無しのバネ男さん 6/19 ID:qfGpuio4P1
一曲目でこれはまずいっすよソータさん
246:名無しのバネ男さん 6/19 ID:kJl4RBVdNN
俺、悔しいよソータさん
247:名無しのバネ男さん 6/19 ID:CB3QGdOybU
何やってんですかソータさん!
248:名無しのバネ男さん 6/19 ID:avfzx63SK1
もういいっちゅうねんwソータの話はww
249:名無しのバネ男さん 6/19 ID:7lCA1d5nc9
そういえばバネ男もすげえふらふらしてたけど大丈夫なんかな
250:名無しのバネ男さん 6/19 ID:6NNIxQO51f
たしかに歌ってる時もお座りしてたもんね
251:名無しのバネ男さん 6/19 ID:XraxHIV1ap
お座り可愛いな
252:名無しのバネ男さん 6/19 ID:PlhKmLrl2O
あれはパフォーマンス的なやつでは?つーかどっちかというと土下座してるみたいだったけど
253:名無しのバネ男さん 6/19 ID:Piw3WrLP6p
カッコよかったけどなあれ。何かに祈ってるようで、僕は良かったと思うよ。
254:名無しのバネ男さん 6/19 ID:XCS07oybWJ
まあいつものバネ男は動きなさすぎるしな
255:名無しのバネ男さん 6/19 ID:qNfbLoAcIW
もう誰かが切り抜き作ってるぞ
256:名無しのバネ男さん 6/19 ID:leUd2r11vY
Shortもあがってるし。
257:名無しのバネ男さん 6/19 ID:OHwC7zx0CN
いやwなんでもう二万まわってるんだよww
258:名無しのバネ男さん 6/19 ID:g413gn0Cuq
cryは15万回いってるぞ。
259:名無しのバネ男さん 6/19 ID:B88UWhJbce
はえええええええwwww
260:名無しのバネ男さん 6/19 ID:NBhzousCML
まだ十分たってないくらいでこれか
261:名無しのバネ男さん 6/19 ID:9WFtNUb4Cq
さすがバネ男といったところか
262:名無しのバネ男さん 6/19 ID:hkf38GPrGX
へたれそうになってたけどなww
263:名無しのバネ男さん 6/19 ID:FvhE9WGojt
でもマジでうたうめえのな。今回はマジでビビったわ。正直舐めてた。
264:名無しのバネ男さん 6/19 ID:MeRD02w6Mn
バンドでもあんだけ歌えるんやなー
265:名無しのバネ男さん 6/19 ID:yiTswrBSYP
初ライブとは思えないクオリティ
266:名無しのバネ男さん 6/19 ID:rdc1CJUJlZ
それな!ガチでカッコよかったんだが!!
267:名無しのバネ男さん 6/19 ID:SrxSPVEgH7
いや普段の配信よりすごかっただろ
268:名無しのバネ男さん 6/19 ID:is6odJLPRz
今日おかしかったよねバネ男
269:名無しのバネ男さん 6/19 ID:icCYhe7Pdn
いつもだろ変なの
270:名無しのバネ男さん 6/19 ID:XKiOMxZbZ2
異様に上手かった
271:名無しのバネ男さん 6/19 ID:d9FhpEYj50
心にくる歌い方だったよな
272:名無しのバネ男さん 6/19 ID:PJ4e4zuLxc
気持ちがこもってた。まるでバネ男の体験してきたことを歌っているようで、感情が伝わってきた。
273:名無しのバネ男さん 6/19 ID:u6ujTtgyEc
リアリティがすごかったな
274:名無しのバネ男さん 6/19 ID:5bqdStUBmI
つうかバンドいいなー生演奏は迫力あるわー
275:名無しのバネ男さん 6/19 ID:BDGmAAkE7M
それな!このあいだのアコギで歌ってたのもすげーよかった
276:名無しのバネ男さん 6/19 ID:98tXLziB6h
あんときも気持ちがこもってたねえ
277:名無しのバネ男さん 6/19 ID:8yq6TL2sLA
バネ男バンドやればいいのに
278:名無しのバネ男さん 6/19 ID:rvAB5eqa28
た し か に
279:名無しのバネ男さん 6/19 ID:SQyagOOwVs
今回おとなしめの曲ばっかだったけど、激しいやつも聞いてみたいな
280:名無しのバネ男さん 6/19 ID:QJQ28oks6U
確かに。でもうちはバネ男のcryが聴けて満足。
281:名無しのバネ男さん 6/19 ID:5IsuuoAlM0
いやほんとに!まじでまだ余韻がすげえもん
282:名無しのバネ男さん 6/19 ID:wFZXRmsfGV
俺さっきからずっとリピートしてきいてるわ
283:名無しのバネ男さん 6/19 ID:FaBwuObdMu
わしも。歯磨きしながらヘッドホンして爆音で聴いとる
284:名無しのバネ男さん 6/19 ID:H9SD8yIHpr
あーあ、マジで良すぎだろ。泣きすぎて頭いてえ
285:名無しのバネ男さん 6/19 ID:bTrFy96Qu7
まじで歌い方が神だったわ。今日イチびびったもん。
286:名無しのバネ男さん 6/19 ID:PwrLMjZ8zS
本当に、バネ男の『cry』を聴けてよかった
――画面の向こう。板へ文字を打ち込んだ私は、再びバネ男が歌った『cry』を再生し思いを馳せていた。
「……あんこ」
真っ白くて、ふわふわの綿菓子のような姿をした犬。それなのに名前は『あんこ』だった。食いしん坊でいつも私の食事を狙ってじーっと見つめてくる。その目が可愛らしくて愛おしかった。
あんこはお風呂が大っ嫌いで入れられるのを察知すると必ず逃走して、某テレビ番組の『逃○中』のような状態になっては無駄に体力を消費させられた。
普段全然運動をしない私にとって体力が尽きて毎度死にかけるようなイベントだったが今となっては良い思い出だ。
(……小さい体で、短いあんよを一生懸命に動かして……走り回ってた)
ふと目に入る、床の僅かなひっかき傷。
――あれは寒い冬の日だった。毎年それほど振らないはずの雪で交通網が麻痺して、私はあの子を抱えて走った。なんどもこけそうになり、白い息を煙らす。
慌てて部屋を出たものだったから、着替えもしてなくて。上はセーターにコート、下はジャージという普段の私ならそれで外出するなんてありえない恰好だった。
「揺らしてごめんね、あんこ。もうすぐ動物病院だから、頑張って」
そう言いながらも、内心もうだめだと思っていた。というよりかかりつけのお医者さんが言っていたのだ。今度体調が悪くなれば覚悟した方がいい、と。そういわれた。だから、私の呼びかけにほとんど反応しなくなってしまったあんこを見ながら、別れを確かに予感していた。
あんこは親がペットショップで購入した犬だった。犬種はポメラニアンという奴で、父と離婚した母が寂しいからという理由で買い始めた子。娘の私からするとどこか複雑な気持ちになってしまう理由だったが、心の穴を埋める為に生き物を飼う人が多い理由をいまでは理解できた。
数年前に母が他界して、あんこは私と一緒に暮らすようになっていた。私は一人っ子で兄妹もなく、他に引き取り手が無いことから飼う事にした。というより、実は飼いたいとは前から思っていたりした。
あんこは年に片手で数えるくらいしか実家に帰らない私にずっとついて回るような可愛い奴で、ソファーで横になっていると腕の中に潜り込んできたりとすごく懐いてくれていた。だから私はあんこの事が一緒暮らすようになるまえから好きになっていた。
あんこはわんぱくな子で、悪戯好きだった。私が寝ている時よく上にのったり、あげたひよこのぬいぐるみを噛んで綿だらけにしたり。外を散歩すると野良猫に吠えて喧嘩を売ったり、うるさいって近所のおじいちゃんに怒られたり……。
私は一人暮らしだったし、あんこと暮らすのには頑張って働かなきゃいけなくって。だから、疲れてるときに構って攻撃をされるとイラついたり、ちゃんとご飯を食べてくれなかったのをみてムカついたり……寝不足で寝ている時に乗ってこられたときは辛かった。
でもだからこそ、本当の家族みたいだった。いや、家族だったんだ。苦しいときには寄り添ってくれて、泣いていると黙って体を当ててくる。もしかすると乗ってくるのは私を守ろうとしてくれていたのかな。猫に吠えるのも嫉妬だったのかな。前に嫌味をいわれて困っていたからお爺ちゃんにも吠えて遠ざけようとしてくれたのかな。
亡くなってから、部屋のモノを整理した。思い出せば苦しくなってしまうから。仕事に打ち込んで忘れようとした。
けど、今わかったんだ。
(私、あんこがいたからお母さんの死を乗り越えられた……側にずっといてくれたのに)
『――もっと、側に居たかったよね』
そうバネ男が歌った時、あんこの顔が鮮明によみがえった。枯れたかと思っていた涙が頬を伝って床にポタリと落ちた。ふと目に入る、床の僅かなひっかき傷、とたとたと走ってくる足音、そして抱きしめたときの柔らかくて温かい体温が……。
――心にあった小さな記憶の欠片は、ガラス片のように食い込んで愛しい傷となった。
まだ一緒に居たかったよね、でも先にいくよ。
忘れないでね、と温もりを残して。
『君は旅立った』
……部屋のそこらにある記憶の欠片。あんことの思い出は、捨てた皿やぬいぐるみだけじゃなくて、私の中にあった。
忘れようとする私に、彼は忘れちゃだめだと歌う。
「……そうだよね。ずっと一緒だよね、あんこ」
あんこを近くに感じた。
――今日、バネ男の歌う『cry』を聴けてよかった。
……ポタッと、床の傷に落ちた涙が滲みる。
☆
――バンド、『rush blue』――
「……ああもう、なにをやってるんだか。はあ、完全に動揺しちゃってるわね、あの子」
橘 鳳翔は『rush blue』の演奏を観ながら、そのミスの多さに思わずをため息を吐いた。
『バネ男』を意識するあまり、グダグダなMCで無理に客を煽り滑りだした開幕。空気が悪くなったのを察知してから回りだした。
おそらくは自分らが勝っているポイントで勝負をしようとしたんだろう。けれど、それも失敗。
次に負けず嫌いの性格が災いする。それはソータの最大の長所でもあるのだが、この場合においては逆効果になった。起死回生の歌唱力勝負。
明らかに『バネ男』を意識しているのは誰の目から見てもわかった。いつもならライブを盛り上げることを重視するパワフルな歌い方が、『バネ男』のように感情表現をしようとして音程もリズムも、唯一勝っていた声量さえも失っていた。
(……それを聴いた観客がさらに冷めていく。そしてその反応に気が付きソータと楽器隊のテンションがさがりパフォーマンスも落ちていく……悪循環ね)
『rush blue』は観客を盛り上げ一体感を生み出すバンド。客の反応を察知するのが得意で、そこからライブを上手くコントロールできるのが最大の強みだった。しかし、だからこそ今はそれが裏目に出ていた。
(ソータ、違うでしょう。悔しいでしょうけど、そこで戦っても絶対に勝てないわよ)
――
……まて、今何曲目だ?ああ、そう、この前奏……三曲目だ……。
くそ、全然客席の奴らが沸かねえ。なぜだか無性にイラつく。そんなライブだって経験してきたはずだ……メンタルの保ち方だってちゃんと……なのにこの落ち着かない感情は何なんだ?
――いや、まて……まてまて、冷静になれ!いままでこんな局面いくらでもあっただろ!
(……負けたく、ねえ)
楽器隊はウチの方が上なんだ。橘も観てる、ちゃんとやらねえと今後に響く。まともにやればバンドとしては俺達の方が上なんだ。
(でも、ボーカルとしては……?)
……俺、まずいんじゃねえのか。
明らかに『yoseatume』の方が観客の反応は良かった。それは間違いなく『バネ男』のあの異様な歌唱力によるものだ。一度聴けば頭から離れない、心に焼き付く本物の歌唱力。
(……俺は、偽物なのか)
いや、まだ……まだだ。諦めねえ。俺が負けているなら、越えればいいだけの話だ!俺もあのレベルに上がればいいだけの、ただそれだけの事だろ!!あいつのボーカルとしての強みは深い表現力。それさえできれば……!!
――
「まあ……稀に見る酷いライブだったわね、あなたたち。何なのあれ」
控室前の廊下。橘 鳳翔はライブを終えたばかりの『rush blue』メンバー四人を集めそういった。誰も言い返せないのは当然で、他の誰がどう見ても失敗だったことは明白だった。
「……すみません」
ソータが頭を下げると、橘は背を向ける。
「はあ……まあいいわ。次からはしっかりやってね」
立ち去る橘を見送り、その姿が消えたのを合図に解散。『rush blue』の面々も今日のライブが酷い出来だったことを自覚しており、声を掛け合いフォローする気力すら無かった。
帰り支度をするために控室へ入っていくメンバー。しかしソータは一人、ある人物と接触するために別の場所へ向かった。
(……せめてあいつをウチに引き込めたら……)
向かいから歩いてくる一人の女性。彼女がソータに気が付き表情をこわばらせる。
「……秋乃 深宙。ウチのバンドに来い」
「嫌です。さっき話は終わりましたよね……そこどいてください」
すれ違う二人。ここを逃せばもう引き入れる機会はおそらく無い。ソータの焦りとストレスが限界を超えた。秋乃の背を追いかけ、腕を掴もうと手を伸ばす。
「おい!待てって!!」
びくりと体を震わせ振り向く秋乃。反射的にソータの手を逃れようとしたが、遅く手首を掴まれた――
「!?」
――はずだった。ソータの手は秋乃へと届かず、逆に手首を掴まれたのはソータの方だった。突然の事に受け身もとれず、後方へ引っ張られ倒れ込む。
床に両手をつくソータ。まるで土下座のような姿勢で、自分の手を引いた相手を見上げた。
「……てめえは……」
「もう止めなよ。……秋乃、嫌がってるでしょ」
ソータを見下ろしていたのは、根暗くんと揶揄した『yoseatume』のスタッフだった。
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