ラーメン屋に行ったら校内一の人気者である『聖女様』と友達になった

やこう

第1話 ぼっちな俺と聖女様

「──うわわわわ、また負けちゃったよ〜」


「ああ、後ちょっとだったのにぃ……」


「でも益山くんのアドバイスのおかげで私成長したくない!?」


「確かにそれは一理あるね」


「な、なんだその言い方は! 本当にそう思っているのか!?」


「い、いや別に深い意味はないけど……!」


 ──とある金曜日の放課後。

 昼下がりの春の日差しがこちらを照らしてくれていてぽかぽかと温かい。

 俺と友達は公園にてベンチに腰掛けていた。

 俺がアドバイスをしながら友達が一生懸命になり二人で楽しくゲームをプレイしている。

 何気ない日常の一コマ。

 そのような言葉で片付けたくなるが、今のこの状況は少し前の俺からでは考えられないような状況だった。

 

 なぜなら俺の隣に座り無邪気な笑みを浮かべ、一緒にゲームをプレイしているのは、最近できた俺の友達。

 そしてその友達とは俺の学校で知らない人は居ないくらい有名な『聖女様』だからである。

 



 ******


 

 

 俺は益山渚ますやまなぎさ、高校二年生。

 どこにでもいる普通の男子高校生だ。特に勉強も運動もめちゃくちゃできるわけでもなくできない訳でもない至って普通。顔も普通。

 特にそこの面に関してのコンプレックスはないが、俺の唯一のコンプレックスは友達がいなかった、ということだ。

 

 高校になって周りの子と仲良くなり、放課後はカラオケに行き、休日はみんなでプールとかショッピングモールとかに遊びに行く……みたいな華々しい高校生活を思い浮かべていたが、現実はそう上手くいかなかった。


 入学式の日におばあちゃんがとても大変そうにしていたので、声をかけた。

 すると荷物を持って欲しい、との事だったので荷物を持っておばあちゃんの家まで案内することになった。

 そこから五分くらいとの事だったので、時間はまだ大丈夫だと思いおばあちゃんについていったがおばあちゃんは道を間違え知らない道へ。

 そんなこんなでおばあちゃんになれてなさそうな携帯の地図を見せながら歩くこと三十分。

 

 めちゃくちゃこっちも申し訳なくなるくらいお礼を言ってもらったしお詫びにと言って千円札まで貰った。


 しかしその影響で電車に乗り遅れ、俺は入学式に遅れた。

 やべ、少し浮いてしまったな、と思ったのもつかの間。

 その次の日、今日は昨日の遅れを取り戻そうと意気込んで起きて熱を測ると正体不明の風邪により三十八度。

 そこからその熱がなかなか下がらず四日間学校に行けなかった。


 そんな俺がいないうちに。クラスでの自己紹介タイムやレクも済まされていて、俺が学校に行けるようになった頃にはもう友達グループが出来てしまっていた。

 それからというものの、別にクラスからハブられるわけでもなければ、いじめられるといったそのようなことは無いし、別に学校生活を送る上で不自由なことは何一つない。

 

 しかし俺、益山渚は入学式に遅れ、その後風邪で学校を休み、結果高校デビューに失敗しぼっちになってしまった。




 ******



 俺の高校の同じクラスには『聖女様』こと、水沢羽音みずさわはのんが居る。

 もちろん比喩なのだが、彼女は常にその名に負けないような神秘的なオーラを放っている。

 ツヤのある黒髪を肩下ほどまで伸ばし、その透き通るほど白い色の肌はまるで雪のようだ。

 モデルのようなスラッと伸びる背。

 出るとこはしっかり出て、引っ込むところは引っ込んでいる。男と女の憧れを具現化したかのような彼女にはみんなの目が釘付けになる。

 そんな彼女はとても優雅でお上品。

 みんなからとても慕われるような、尊敬の目を向けられている存在だ。


 俺はそんな『聖女様』こと水沢羽音と今年になり同じクラスになった。

 まぁ同じクラスになったのだがぼっちの俺になど特に接点はなく、特に会話を交わすことなく高校生活の二年目の一ヶ月が過ぎた。

 俺は彼女を目の保養くらいにしか思っていなかったし、特にお近付きになりたいとか、そんな考えを抱くことすらなかった。


 ──しかしある日俺はそんなみんなの憧れ『聖女様』の知られざる一面を見たことにより、彼女と急接近することになる。

 時は少し前の放課後の時間に遡る。

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