第100話

つまりどういうことですか、と問いかけるようにインドさんを見つめ始めてすぐ、新が手で目隠ししてくる。



手をどかせば、隣には目に毒な程の色気を孕む微笑みがあった。



「そんなに見つめる必要ある?」と言わんばかりの、ちょっと怖い笑みだ。



新のタチの悪い独占欲が発動したらしい。私はニヤける顔を誤魔化すために、視線を明後日の方向に向けておく。

 



 

『ん"ん"っ』

 




インドさんがわざとらしく咳払いをしたことで、私たちの視線は再び画面へ向けられた。

 




『……この論文、ゾアントロピーは獣人になり得るのかっていう、ファンタジックな文献に見えますけど、後半は全く様相が違っていて。簡単に言ってしまえば、"完全に猫獣人化した者の血肉を摂取すると不老不死になる"と書かれていました』





インドさんの言っていることを理解するのに、数秒はかかった。リアリティに欠ける内容だったから、私は間抜けな表情になっていたと思う。

 



「血肉で……不老不死……?」



 

これ書いた人、ファンタジーに夢見すぎてない?



そう言おうとしたけど、インドさんの真剣な表情を見て、そんなことも言ってられないのだと気づいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る