第71話
慌てて背後を振り返ると、砂糖菓子のように甘い笑みを浮かべる新がいた。
黒髪が無造作に乱れ、寝巻きの隙間から綺麗な鎖骨が顔を覗かせている。匂い立つ色気に眩暈がしそうになった。
直視できずに視線をさまよわせていると、新はさりげなく私の腰を引き寄せる。
「離れないでよ。寂しいから」
私は下手に動くこともできなくなってしまった。先ほどの衝撃から逃れられない。体の火照りも治まる気配がなかった。
無抵抗な抱き枕のようになってしまった私にも、手加減するつもりはないらしい。頭を私の肩にすり寄せた後、首筋に鼻を近づけてきた。
「モネって、甘くてかわいい匂いがするよね?」
――これはもう、ダメだと思う。
キャパがオーバーした私は、この男を犬だと思うことにした。この生物は人に甘えてくる大型犬。外国産のかっこよくて気品溢れる、なんかそういう犬種!すぐには思いつかないけど!そんなやつ!いるよね!?
「おやすみ、モネ」
額にやわらかい感触が降ってきて、再び思考が停止する。新は美しい青い目を細めて、満足そうに微笑んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます