第71話

慌てて背後を振り返ると、砂糖菓子のように甘い笑みを浮かべる新がいた。




黒髪が無造作に乱れ、寝巻きの隙間から綺麗な鎖骨が顔を覗かせている。匂い立つ色気に眩暈がしそうになった。



直視できずに視線をさまよわせていると、新はさりげなく私の腰を引き寄せる。





「離れないでよ。寂しいから」




私は下手に動くこともできなくなってしまった。先ほどの衝撃から逃れられない。体の火照りも治まる気配がなかった。




無抵抗な抱き枕のようになってしまった私にも、手加減するつもりはないらしい。頭を私の肩にすり寄せた後、首筋に鼻を近づけてきた。





 

「モネって、甘くてかわいい匂いがするよね?」




 

――これはもう、ダメだと思う。

 




キャパがオーバーした私は、この男を犬だと思うことにした。この生物は人に甘えてくる大型犬。外国産のかっこよくて気品溢れる、なんかそういう犬種!すぐには思いつかないけど!そんなやつ!いるよね!?

 




「おやすみ、モネ」




額にやわらかい感触が降ってきて、再び思考が停止する。新は美しい青い目を細めて、満足そうに微笑んでいた。

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