『お姉さんは優秀なのに。滝沢さん苦労するわね』

『中学校でひどいいじめに遭ってるんでしょう？モネちゃんの噂が原因って聞いたわ。かわいそうに』

『でも、私たちは何もしてあげられないから……』

遠ざかっていく会話の中に信じられない内容が混ざっていて、驚きでその場から動けなくなった。

……いじめ？

成績が良くて、部活でもいい成績を残していて、小さな離島とはいえ島一番の美人さんって評判の、気の強いあのお姉ちゃんが？

全く想像つかなくて、悶々と考え込んでしまった。

『モネ？』

放心していた間に姉はすでに帰宅していたらしい。セーラー服姿のままの彼女は、庭にぼーっと佇む私を疑わしい目で見てくる。

『お姉ちゃん、学校でいじめられてるの？』

深くは考えずに、純粋な疑問を投げかけた。それが、姉をひどく傷つけるものだとは知らずに。

姉は目を見開いたあと、わなわなと唇を震わせる。涙袋の上に涙の膜がぷくっと浮かびあがる。

『私は！！！いじめられてない！！！』

水筒を投げつけられ、私はびっくりしてその場から逃げ出した。わー！と大声で泣く姉の声は、込み上げてきた怒りの塊が爆発したような叫びだった。

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