第21話傘の怨念
コンビニで買い物して、店を出ようとした時、パラパラと雨が降っているのに気付いた。
傘を持ってきてない、嫌だなと、ふと傘立てを見ると黒い男物の傘があった。誰の傘か分からないが、まるで自分の傘のように何食わぬ顔で手に取り、それをさして、コンビニを後にした。傘をパクるのは、これが初めてではない。たかが傘だと彼は思っていた。だが、コンビニから交通量の多い道路の歩道に出たとき、強い雨風が吹いて、つい、傘に引っ張られるように車道に飛び出してしまった。キキッという急ブレーキは聞いたが、強い衝撃で一瞬で意識が飛んでいた。即死だった。その後の警察の現場検証では、彼が持っていたはずの傘は、現場のどこにも落ちていなかった。そして、梅雨時の数日後、その傘は獲物を待つように別のコンビニの傘立てにあった。その傘の本当の持ち主は、誰かにコンビニで傘をパクられて雨の中ずぶぬれで帰宅し、それが原因で肺炎を起こし体調を崩して死んだ。ひとり暮らしだったので、適切に看護してくれる人がいなかったので風邪をこじらせた結果だろうという検死結果が出て、彼の持ち物だったその傘が、持ち主の敵討ちとして他人の傘をパクっていく奴らに復讐していたのだ。今日も、どこかのコンビニで、その黒い傘は、獲物を待っているはずだ。
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