続SS
飛鳥竜二
第11話 SS9 深圳残照
※この小説は、「SS」の続編です。実はパソコンの操作ミスで「SS」の編集ができなくなりました。そこで新しくページをつくりました。第10話まで読んでみたい方は
「カクヨム SS」で検索して読んでみてください。
20〇〇年、C国でひとつの裁判が結審した。
「被告は心身膠着状態だったので無罪」
という判断である。罪状は殺人であった。
事件は、1年前に発生した。日本人家族が襲われ、10才の少年がナイフでさされ数日後に死亡したのである。その日は「抗日の日」ということで、過去の満州での柳条湖事件の日であった。朝に見たTVの映像を見て、日本人憎しの思いを募らせた犯人が過去と現実を交錯させてしまい、反抗におよんだというのが弁護側の考えであった。世論もその考えに同調し、犯人に同情的な意見が多かった。
SSJの雄一に依頼がきたのは、秋も終わろうとする日だった。ある国会議員の秘書という方から秘密連絡がきて、ある公園のベンチで散歩を装って彼とあった。そこで依頼文書を受け取ったのである。その依頼文書には
「日本人少年を殺害した犯人を始末してほしい。彼は以前にも同様の未遂事件を起こしており、今後も事件を起こしかねない人物。警察はあてにならない。報酬は10万$用意してある」
と書いてあった。雄一は早速、依頼主の議員さんの内定を行った。すると議員さんの有力支持者の孫が被害者だということがわかった。単なる怨恨であれば、SSが出る幕ではない。だが、これからも日本人がねらわれるとすれば話は別だ。
C国にとんで、その犯人の動向をさぐった。彼の名はチャン。年齢は40才。無職の独身。ただ、最近は抗日のヒーローとしていろいろなところに呼ばれて話をしているようだ。近いうちに本を出すということだ。もちろんゴーストライターが書くことになる。無職だが、生活には困っていないようだ。事件前は失職してやけのやんぱちになっていたという話もあった。ミニ講演会で彼の話を聞く機会があったが、ヒーロー気分で話をし、「また、やってやる」ということまで言っていた。そこで雄一はクロと認定した。
帰国し、雄一はSS13を呼んだ。彼は狙撃の名手だが、今回は銃の使用はなしだ。SS13は早速C国に向かった。香港から深圳に入る。C国というイメージがほど遠いほど都会化している。だが、それは表面だけで、裏にまわると落ちこぼれた人たちの貧困地帯がある。チャンもそういうところに住んでいた。本が売れれば、高級マンションに引っ越すということを周りに言っているようだ。
3日間、チャンの動向をさぐった。そこで、彼が必ずいく酒場を見つけた。その酒場にSS13も行き、チャンの隣のテーブルに座ることができた。後は、チャンがトイレに行く機会をねらうだけである。そこで、3つの選択をした。
1 チャンが飲んでいたドリンクに毒物をいれる。
2 チャンが食べていた料理に毒物をいれる。
3 チャンが座っていた席に細工をし、お尻に毒針がささるようにする。
のどれかにするかを考えた。1のドリンクへの毒物は他の客の目があるのでやめた。2の料理への毒物はチャン以外の客が食べる可能性があるので、これもやめた。そこで、結論は3の座席への毒針である。
SS13はチャンがトイレに立った時に、ドリンクをもってチャンがすわっていたテーブルの近くにいき、つまずいたふりをしてドリンクをチャンの席にこぼした。
「 Sorry , my mistake . I change this seat . 」
(ごめん、私のミスです。席を交換します)
と言って、自分のシートと交換した。もちろん毒針込みのマット付きである。
数分後、チャンがもどってきてその席に座る。すると、しばらくするとテーブルの上に突っ伏してしまった。この毒は最初猛烈な眠気に誘われる。そして1時間ほどたって全身に毒がまわり死んでしまうというものだ。よって、周りの者には酔っぱらって寝ているかのようにしか見られない。
それを見届けたSS13は店を後にした。チャンが毒殺されたことが判明されるのは明日になるであろうと思われた。その日のうちに香港に移動し、深夜便に飛び乗ったのは言うまでもない。
翌日のC国の新聞には「抗日のヒーロー、謎の死をとげる」という小さな記事がでた。抗日のヒーローとはいえ、殺人者であることには変わらない。街の人たちも一安心していたのかもしれない。
これにて任務完了。
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