第96話

振り返りもせずに早足で道を進む。


涙が頰を伝って服に染み込んでいく。



今の私には何が足りないんだろう?


私は芹沢くんの恋愛対象にすらなってなかったってこと?



泣きたくなんてないのに次から次へと涙が溢れ落ちてくる。


手で拭ってもキリがない。




「…っ、」




相手に拒まれてしまったらもうどうにも出来ない。



好きにならなければ良かった。


そうすればこんな思いしなくて済んだのに。



だって、仕方ない。


あんなに惹かれる人に初めて会ったんだから。


あれが私の初恋だったんだから。




「──ご乗車ありがとうございます」




しばらくしてバス停に到着したバス。


泣き腫らした目のまま、バスに乗り込んだ。


それから家に着いて気絶するように泣きながら眠りについた。

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